「もし今、外に停めているアルファードが水没して全損したら、ローンってどうなるの?」
大型台風のニュースをテレビで見ながら、ママが何気なく口にしたその一言に、私は一瞬息が止まりました。我が家の愛車は、憧れのアルファード。でも、現金一括で買えるはずもなく、残価設定型ローン(残クレ)を組んで必死に毎月の支払いを続けています。
「いや、最悪の場合でも車両保険に入ってるし、車がなくなれば残クレのローンもチャラになるんじゃない?」
最初はそう軽く答えた私(パパ)ですが、気になってスマホで調べていくうちに、背筋がスーッと寒くなりました。結論から先にお伝えします。残クレ中に事故や水没で車が全損しても、ローン残債が自動的に消えることは絶対にありません。車を失った悲しみとパニックの中で、「手元には車がないのに、数百万円のローンだけが残る」という最悪の事態が起こり得るのです。
当時の私たちは、「車の価値」と「ローンの残債」を完全に同じものだと思い込んでいました。「いざとなれば車を返せばいい」という残クレ特有の安心感にどっぷり浸かっていたのです。しかし、全損時においてはその常識が全く通用しません。
この記事では、私たちサルヂエファミリーがかつて直面しかけた「残クレ×全損」の恐ろしい勘違いと、そこから学んだ「家計を守るための正しい知識と確認手順」を、実体験ベースで整理していきます。現在、事故や水没に遭われて焦っている方も、まずは深呼吸してください。次に何をすべきかが分かるよう、順番に解説していきます。
残クレ中に全損してもローンは自動では消えない
「車がなくなったら、ローンも消えるでしょ?」
かつての我が家のように、そう思い込んでいる方は意外と多いのではないでしょうか。私自身、残クレの契約書を引っ張り出して細かい字を読み返すまで、完全に勘違いしていました。
車がなくなってもローン契約は残る
私が一番ショックだったのは、「ローン会社からお金を借りている事実」と「そのお金で買った車」は、法律上も契約上も別問題だという事実でした。
車がピカピカの無傷であろうと、事故でスクラップになってしまおうと、ローン会社からすれば「お金を貸したんだから、毎月きっちり返してくださいね」というスタンスは変わりません。スマホを落として画面をバキバキに割ってしまっても、端末代の分割払いが続くのと同じです。
我が家の場合、もし今アルファードが全損したら、毎月の生活費を切り詰めてやり繰りしている中から、存在しない車のローンを払い続けなければならない……。その現実を知ったとき、夫婦でしばらく無言になってしまいました。
残価部分も契約上の支払い義務に含まれる
さらに私を震え上がらせたのは「残価」の扱いです。
残クレは、「3年後や5年後の買取保証額(残価)」をあらかじめ差し引いて、残りの金額だけを分割で払うから月々の支払いが安くなる仕組みですよね。我が家も「月々これくらいならアルファードに乗れる!」と飛びついたクチです。
しかし、冷静に考えてみてください。あの「残価」の部分も、立派なローンの一部なのです。普段は「最後に車を返せば、残価分は払わなくていい」と思っていますが、これはあくまで「車が約束通りの状態で返却できること」が絶対条件です。
事故や水没で全損してしまった場合、車を元の状態で返却することはできません。つまり、「免除されるはずだった数百万円の残価」も、自分たちで一括、あるいは分割で返済しなければならない義務が残ってしまうのです。
「返却すれば終わり」とは限らない
「でも、残価保証って契約があるじゃないか!」と、私も最初は思いました。
確かに残クレには残価保証がありますが、契約書の約款をよく読むと、「事故歴がないこと」「著しい損傷がないこと」といった厳しい条件がズラリと並んでいます。
販売店の担当者にも確認してみましたが、「全損となった場合は、その時点でローンの一括返済を求められるケースが一般的です」と申し訳なさそうに言われました。通常時の「車を返却してサヨナラ」という気軽な選択肢は、全損時には消滅してしまうのです。この事実を知ったとき、「残クレの仕組みを都合よく解釈していたのは自分たちだった」と思い知らされました。
そもそも「全損」とはどういう状態?
全損の恐ろしさを知った私たちが次に疑問に思ったのは、「じゃあ、どこからが全損になるの?」ということでした。
ママは「高速道路でトラックと正面衝突して、車がペチャンコになったら全損でしょ?」と言っていましたが、調べてみると、見た目がそこまでひどくなくても「全損」扱いになるケースが多々あることが分かりました。
修理できない物理的全損
まずはママが想像した通りの、車が物理的に修理不可能な状態です。
激しい衝突事故でフレーム(骨格)が完全に歪んでしまったり、火災で車体が焼け焦げてしまったり。いくらお金をかけても元の状態に戻すことができない、文字通りの「物理大全損」です。この場合は、誰が見ても「もう乗れないな」と諦めがつくかもしれません。
修理費が車の価値を上回る経済的全損
私たちが特に気をつけなければならないと感じたのが、この「経済的全損」です。
例えば、アルファードをぶつけてしまい、見た目はなんとか修理できそうに見えるとします。しかし、見積もりを取ってみたら修理費が250万円かかると言われました。一方、その時点での車の時価額(保険会社が評価する現在の車の価値)が200万円だった場合。
保険会社は「車の価値(200万円)以上の修理代(250万円)は払えません」と判断します。これが経済的全損です。車自体は直せるかもしれないのに、保険のルール上は「全損」として扱われ、時価額の200万円までしか支払われません。残クレの残債がたっぷり残っている時期にこれに該当すると、本当に悲惨なことになります。
水没でも全損になる場合がある
そして、最初のきっかけとなった「水没」。
台風や集中豪雨などで道路が冠水し、アルファードが浸水してしまった場合です。「水が引いたらまた走れるんじゃない?」と軽く考えていたのですが、車は精密な電子部品の塊です。
エンジンやハイブリッドシステム、フロア下のコンピューターまで泥水に浸かってしまうと、ショートして使い物にならなくなります。修理するにしても、配線やコンピューターを総入れ替えすることになり、莫大な費用がかかるため、あっさりと「経済的全損」の判定を受けることが多いそうです。「水没=必ず全損」とは限りませんが、室内まで水が入ってしまうと、全損判定になるリスクが極めて高いという事実を、私たちはこの時初めて知りました。
全損時は「ローン残債」と「保険金」を比較する
「全損になったら車はなくなる。でもローンは残る」という残酷な現実を受け入れた後、私たちが次に直面したのは「じゃあ、いくら自分たちで払わなきゃいけないの?」という恐怖でした。
ママが「でも、うち車両保険に入ってるじゃない! それで全額払えるんでしょ?」とすがるように聞いてきましたが、私は手元の保険証券と残クレの残高照会画面を見比べながら、冷や汗をかいていました。実は、全損時にどうなるかは「現在のローン残債」と「保険会社から支払われる保険金(車両保険金額)」のバランスによって、天国と地獄ほど結果が変わってくるのです。
我が家が深夜のダイニングテーブルで電卓を叩きながらシミュレーションした、3つのパターンをご紹介します。
ローン残債と保険金が同程度の場合
まずは、一番被害が少ない「ローン残債と保険金がほぼ同じ金額」というケースです。
例えば、ローンの残債が300万円で、車両保険から支払われる金額も300万円だった場合。支払われた保険金をそのままローン会社に回して一括返済すれば、借金はきれいにゼロになります。
「よかった、これなら最悪の事態は免れるね」とママは胸を撫で下ろしていましたが、私は冷静に「いや、でも手元に車は残らないよ。次の車を買う頭金もないし、またゼロからローンを組むことになる」と現実を突きつけました。借金が残らないだけマシとはいえ、決して「プラス」になるわけではありません。しかも、この「ぴったり同額」というケースは、実はかなり珍しいということを後になって知ることになります。
保険金がローン残債より少ない場合
私たちが電卓を叩いて一番青ざめたのがこのパターンです。まさに「残クレの落とし穴」と言っても過言ではありません。
もし、ローンの残債が400万円あるのに、車両保険の支払額が300万円にしかならなかったらどうなるでしょうか。
保険金を全額ローン会社に振り込んでも、まだ100万円の借金が残ります。この差額の100万円は、私たちの自己負担です。しかも、先ほども触れた通り、全損時は残クレの契約上「一括返済」を求められるケースが少なくありません。
「えっ、手元に車がないのに、明日までに100万円用意しろって言われるの!?」とママが叫びましたが、まさにその通りです。毎月のカツカツの家計から、どうやって100万円を捻出するのか。最悪の場合、車を失ったうえに新たなカードローンなどを組んで借金を返済するという、二重苦の生活が待っています。我が家のシミュレーションでは、見事にこの「保険金が足りない」状態に陥っていました。
保険金がローン残債より多い場合
逆に、保険金がローン残債を上回るケースもあります。
ローンの残債が200万円で、保険金が300万円出た場合です。ローンを完済したうえで、手元に100万円が残ります。これなら次の車の頭金にすることもできますよね。
ただ、残クレを利用している場合、この状況になるのは「頭金をかなり多く入れていた」「残価設定額が極端に低かった」あるいは「ローンの支払いが終盤に差し掛かっている」といった一部のケースに限られます。月々の支払いを極限まで抑えるために残クレを組んでいる我が家のような状況では、あまり現実的ではない夢物語でした。
車両保険があれば残債はすべて払える?
「なんで保険金がローン残債より少なくなるの? 保険って、買った時の値段(新車価格)で全額補償してくれるんじゃないの?」
保険証券の金額を見たママの疑問はもっともです。私も最初はそう思っていました。「アルファードを500万円で買ったんだから、全損したら500万円の保険金が出るはずだ」と。しかし、ここに自動車保険の大きな勘違いが潜んでいました。
車両保険の金額とローン残債は一致しない
そもそも、ローン会社が計算する「ローンの減り方」と、保険会社が計算する「車の価値の減り方」は全く別物です。
特に残クレの場合、月々の支払額が安く抑えられているため、最初の数年はローンの元本が驚くほど減りません。一方で、車の価値(とそれに連動する保険金額)は、新車登録から1年も経てばガクッと落ちます。
「ローンは全然減ってないのに、保険で出る金額だけがどんどん下がっていく」。この恐ろしいギャップこそが、残クレ中の全損で数百万円の自己負担(借金)を抱えてしまう最大の原因なのです。
時価額ベースになる場合がある
自動車保険の車両保険金額は、基本的に「その時点での車の時価額(同じ車を市場で買おうとしたらいくらになるか)」をベースに設定されます。
新車で500万円のアルファードを買って500万円の車両保険に入っても、1年後の更新時には保険金額が400万円、3年後には300万円……といった具合に、年々下がっていくのが普通です。
我が家の場合も、残クレの残高がまだ400万円近くあるのに、車両保険の設定金額は320万円まで下がっていました。「もし今全損したら、80万円も自己負担じゃん!」と気づいたときの血の気は引く思いは、今でも忘れられません。「とりあえず車両保険に入っているから安心」というのは、大いなる幻想だったのです。
特約で補償を厚くできるケースもある
「じゃあ、残クレ中は常に借金リスクを抱えて走るしかないの?」と絶望しかけた私たちですが、後日、保険のプロ(代理店の方)に相談した際に、「特約」という解決策があることを知りました。
例えば「新車特約(新価特約)」というものです。これは、全損や大きな損傷を受けた際に、現在の時価額ではなく「新車購入時の金額」を補償してくれるという神様のような特約です。これがあれば、購入後数年経って時価額が下がっていても、新車価格相当の保険金が下りるため、ローン残高との逆転現象を防ぎやすくなります。
また、保険会社によっては「車両全損時ローン協定保険特約」といった、残高と保険金の差額をカバーしてくれる残クレ向けの特約を用意しているところもあります。
「そんな特約あるなら、保険入る時に教えてよ!」と夫婦で地団駄を踏みましたが、ネット型保険で安さ重視で適当に選んでいた私たちに責任があります。万が一の際、今の保険で本当にローンが完済できるのか、皆さんもぜひ一度、証券と特約を確認してみてください。
水没した場合は車両保険で補償される?
「ねえ、もし今回の台風でうちの駐車場が浸水してアルファードが水没しちゃったら、そもそも保険ってちゃんと下りるの?」
ニュースで泥水に浸かる車を見ながら、ママが不安そうに聞いてきました。実はこれ、私もすごく気になっていたポイントです。「事故」なら保険が使えるイメージはありますが、自然災害による「水没」はどうなるのでしょうか。慌てて保険証券と約款(細かい字で書かれた分厚い冊子)を引っ張り出して確認してみました。
台風・洪水・高潮などの補償
結論から言うと、台風や暴風雨、洪水、高潮による水没被害は、一般的に「車両保険」で補償されます。
我が家が加入している保険をチェックしたところ、補償範囲の欄にしっかり「台風・竜巻・洪水・高潮」の項目にマルがついていました。「よかった、これで一安心だね」とママと胸をなでおろしたのですが、ここで一つ注意点があります。
車両保険には、補償範囲が広い「一般型(フルカバー)」と、車同士の事故などに限定して保険料を安く抑える「エコノミー型(車対車+Aなど)」があります。多くの場合、エコノミー型でも台風や洪水は補償される(「+A」の部分に含まれる)のですが、保険会社や契約内容によっては対象外になっているケースもゼロではありません。残クレでアルファードのような高額車両に乗っているなら、「自分の契約が水没をカバーしているか」は今すぐ確認すべき必須項目です。
地震・津波などの扱いは契約を確認
しかし、約款を読み進めていた私は、ある一文を見つけて言葉を失いました。
「地震・噴火、またはこれらによる津波によって生じた損害は、保険金をお支払いしません」
「えっ!? 津波も同じ水没なのにダメなの!?」とママも大パニック。そうなんです。自動車保険の基本ルールとして、一度に甚大な被害をもたらす地震や津波は、通常の車両保険では対象外(免責)になってしまうのです。
もし地震による津波で車が流されて全損した場合、通常の車両保険しか掛けていなければ保険金はゼロ。手元にはアルファードのローン残債だけが丸々残ることになります。これをカバーするには、「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」といった専用のオプションを付けておく必要があります。これを知らなかった私たちは、更新のタイミングで慌てて特約の追加を検討しました。
補償対象外になるケースも確認する
また、「台風や洪水なら絶対に補償される」と油断するのも危険です。
例えば、「冠水している道路だと分かっていたのに、無理やり突っ込んでいってエンジンが止まった」「台風が来ているのに窓を全開にしていて、車内が水浸しになった」といった場合。これらは「運転者の重大な過失」とみなされて、保険金が支払われない(あるいは減額される)可能性があります。
「少しくらいの水溜まりなら、アルファードは背が高いからいけるっしょ!」と普段から豪語していた私は、ママから「絶対に無理な運転はしないでよ!」とキツく釘を刺されました。保険が下りなければ数百万円の借金を抱えることになるのですから、当然ですね。
任意保険に入っていない場合はどうなる?
ここでふと、恐ろしい疑問が頭をよぎりました。
「もし、車両保険(任意保険)に入っていなかったら、あるいはケチって外してしまっていたら、残クレ中の全損はどうなってしまうんだろう?」
結論から言うと、これは「家計の崩壊」を意味します。絶対にやってはいけない最悪のパターンです。
自賠責は自分の車の損害を補償しない
車を所有している人なら必ず加入している「自賠責保険(強制保険)」。これがあるから大丈夫、と勘違いしている人もいるかもしれませんが、大間違いです。
自賠責保険は、あくまで「事故の相手方(被害者)のケガや死亡」を補償するためのものです。自分のケガや、相手の車、そして「自分の車(アルファード)」に対する補償は1円も出ません。
「えっ、自賠責って自分の車は直してくれないの!?」とママは驚いていましたが、これが現実です。車をぶつけてペチャンコになろうが、水没して使い物にならなくなろうが、自賠責保険からは一切助け舟は出ないのです。
車両損害とローン残債を自己負担する可能性がある
つまり、任意保険(車両保険)に入っていない状態でアルファードが全損になった場合、頼れる保険金はゼロ。
残クレの契約上、車を返却できなくなったことで「残価を含めた残債の一括返済」を求められる可能性がありますが、それをカバーする資金がどこからも入ってきません。
例えば、残債が400万円あったとします。車両保険に入っていれば、そこから300万円や400万円が下りて借金と相殺できる可能性がありますが、未加入の場合は、この400万円が丸々「ただの借金」として重くのしかかってきます。「車はもうないのに、400万円だけ自腹で払ってね」と言われる状態です。
高額な残債がある場合は家計への影響が大きい
想像してみてください。毎月5万円ずつ残クレのローンを払っていたとします。
車が全損してなくなり、通勤や買い物に使うための新しい車も買えないのに、さらに数年間にわたって「存在しないアルファード」のために毎月5万円を払い続ける生活を。あるいは、一括返済を求められて、子供の教育資金として貯めていた数百万円の定期預金を泣く泣く解約する未来を。
「そんなの絶対ムリ! 生活が破綻する!!」とママが青ざめたのも無理はありません。残クレは月々の支払いが安い分、元金(残債)の減りが遅いという特徴があります。だからこそ、通常のローン以上に「任意保険(車両保険)で万が一の残債リスクをカバーしておくこと」が命綱になるのです。我が家は今回の見直しで、この事実を骨の髄まで理解しました。
事故・水没したらまず何を確認する?
「じゃあ、もし今この瞬間にアルファードが水没したり、ドカンと事故に遭ったりしたら……パパ、何からすればいいの!?」
保険やローンの恐ろしい現実を知って完全にパニックになったママが、私の肩を揺さぶりました。「落ち着いて! 私だってテンパるかもしれないけど、だからこそ順番を決めておくんだよ」と、私は自分自身にも言い聞かせるように、スマホのメモ帳を開きました。
事故や水没の直後は、誰だって頭が真っ白になります。特に残クレを利用していると、「車どうしよう」「ローンどうしよう」というお金の不安が先に立ってしまいがちです。しかし、命と安全より優先されるお金はありません。我が家が万が一の事態に備えて夫婦で共有した「5つの確認手順」をお伝えします。今まさに事故や水没に直面してこの記事を読んでいる方も、まずはこの順番通りに動いてみてください。
1. 安全確保と必要な通報
何はともあれ、まずは身の安全の確保が最優先です。
「ローンが……」と嘆く前に、車から離れて安全な場所へ避難してください。水没の場合、ドアが開かなくなる前に脱出することが何より重要です。
そして、警察への通報(110番)。事故の場合はもちろんですが、水没などの自然災害で車が動かなくなり、道路を塞いでしまっているような場合も、二次災害を防ぐために警察へ連絡して指示を仰ぎます。ケガ人がいれば消防(119番)も当然です。「こんなことで警察を呼んでいいのかな」とためらう必要はありません。警察の事故証明がないと、後々保険の請求すらできなくなるという事実を忘れないでください。
2. 保険会社へ連絡
安全が確保できたら、次に連絡するのは任意保険(車両保険)の保険会社です。
「残クレの車だから、先にディーラーに電話しなきゃ!」と焦る気持ちも分かりますが、まずは事故受付センターへ電話し、レッカーの手配や代車の手配を進めてもらうのが先決です。
我が家も以前、軽い接触事故を起こした際、ママがパニックになって私にばかり電話をかけてきたことがありました。「いや、俺に言われてもレッカーは呼べないから、まずは保険会社に電話して!」と言い争いになった苦い経験があります。保険会社の事故受付は24時間対応が基本です。スマホの連絡帳に、保険会社のフリーダイヤルと証券番号を登録しておくことを強くおすすめします。
3. ローン会社・販売店へ連絡
ここでようやく、残クレ特有の対応です。
車を安全な場所にレッカー移動する手はずが整ったら、アルファードを購入した販売店(ディーラー)か、ローン会社に連絡を入れます。
なぜこれが重要かというと、残クレで買った車の「所有者」は、車検証を見ると分かりますが、私たちではなく「販売店」や「ローン会社」になっているからです。勝手に車を廃車にしたり、誰かに譲ったりすることはできません。「事故(水没)で全損になりそうです」と報告し、今後の残債の扱いや、車の所有権の解除などについて指示を仰ぐ必要があります。担当の営業マンがいれば、その後の流れをサポートしてくれるはずです。
4. 現在のローン残高を確認
落ち着きを取り戻し、家に帰るか安全な場所に落ち着いたら、現実的な「お金の計算」に入ります。
ローン会社のマイページ(Webサイト)にログインするか、電話で問い合わせて「今日の時点でのローン残高(残債)」を正確に把握します。
「毎月払ってるんだから、大体これくらいでしょ」というドンブリ勘定は絶対にNGです。残クレの場合、「最後に据え置いている残価」を足し忘れて計算してしまうという罠があります。「残高200万円だと思ったら、残価の250万円を足して実は450万円だった……」というような悲劇を防ぐためにも、必ず「一括返済した場合の総額」を確認してください。
5. 車両保険金額・査定額を確認
最後に、保険会社から支払われる予定の「車両保険金額」を確認します。
これで、「ローン残高」と「保険金」という2つの数字が揃いました。この2つを比較して、足りるのか、足りないのか、いくら自己負担が発生するのかを割り出します。
また、全損判定を受けたとしても、車自体にまだ価値が残っている(部品取りなどで売れる)ケースがあります。この点については後述しますが、保険会社から「全損ですね」と言われたからといって思考停止せず、「この車はまだお金に換えられるのか」という目線を持つことも、家計を守るためには重要です。
全損を避けられなくても「残債リスク」は事前に確認できる
「なるほど、事故の時にどう動けばいいかは分かった。でも、そもそも保険金がローン残高より少なくて、借金だけ残る状況自体が怖すぎるんだけど……」
メモを見終わったママの不安はもっともです。事故や自然災害そのものを100%防ぐことはできません。しかし、「全損になった時にいくらの借金(自己負担)が発生するのか」という『残債リスク』については、実は今すぐ、事前に確認し、対策を打つことができます。
我が家がこの事実を知ってからすぐに行った、具体的な見直し手順を紹介します。
残価設定ローンの残高を定期的に確認する
私はまず、アルファードの残クレを組んだローン会社のWebサイトにログインし、「現在のローン残高」を1円単位で確認しました。
残クレは3〜5年という長い付き合いになります。車を買った直後は毎月の支払いにしか目がいきませんが、「今、自分はいくら借金を抱えているのか」という総額を、最低でも半年に1回は確認する癖をつけることにしました。スマホのスケジュール帳に「ローン残高確認」と定期リマインダーを入れたほどです。
車両保険金額と比較する
次に、手元にある自動車保険の保険証券を広げ、「車両保険金額」を確認しました。
そして、先ほど確認した「ローン残高」から「車両保険金額」を引いてみました。
我が家の当時の状況は、ローン残高約400万円に対して、車両保険金額が約320万円。「もし今、全損したら80万円の借金が残る」という事実を、夫婦で明確に数字として共有しました。
「80万円の借金かぁ……痛いけど、知らずに明日突然言われるより、覚悟ができるだけマシだね」とママ。この「最悪のケースの金額を事前に把握しておくこと」こそが、心の余裕につながります。
必要に応じて保険内容を見直す
金額のギャップ(自己負担額)がどうしても許容できないほど大きい場合は、保険の見直しが必要です。
私たちも、次回の更新時にはネット型保険の「安さ」だけでなく、「新車特約(新価特約)」や、残債をカバーする特約が付けられないか、代理店に相談に行きました。
結果として、特約を付けると毎月の保険料は数千円上がってしまうことが分かりました。「うーん、毎月の出費が増えるのもキツイね」と夫婦で頭を抱えましたが、「数千円をケチって数百万円の借金リスクを背負うか」「安心をお金で買うか」という具体的な議論ができたのは大きな収穫でした。我が家は最終的に、「今の家計の貯蓄なら、万が一の80万円の自己負担はなんとか耐えられる」と判断し、無駄な特約は付けずに現行のままいくという決断を下しました。重要なのは、知らずに放置するのではなく、「知った上でどうするか選ぶ」ことです。
契約終了前の高額残債に注意する
特に注意が必要なのが、残クレの契約終了(車検のタイミングなど)が近づいてきた時期です。
通常なら「そろそろ車を返却して、次の新しい車を選ぼうか」とワクワクする時期ですが、全損リスクという観点から見ると、実は一番危険な時期でもあります。
なぜなら、月々のローン元本は減っているものの、最後の「残価」という大きな塊が丸々残っているからです。一方で、車の年数が経っているため、車両保険金額(時価額)は購入時に比べて最も低くなっています。
「ローン(残価)はたっぷり残っているのに、保険金はちょっぴりしか出ない」。この最悪の逆転現象が起きやすいのが、契約終了の直前なのです。返却の半年前などは、特に安全運転を心がけるとともに、自然災害の予報が出たら車を高台に避難させるなどの自己防衛が必須だと痛感しました。
残クレ中の事故車・水没車は売却できる?
「でもさ、全損してスクラップ同然になったアルファードって、どうせ捨てるしかないんでしょ? 廃車にするのにもお金がかかるんじゃないの……?」
残債リスクの計算をして少し落ち着いたものの、ママの口からは次々と不安がこぼれます。私も最初は「事故車や水没車なんて、ただの鉄クズだ」と思っていました。もし保険金でローンが完済できず自己負担が残るなら、それに加えて廃車費用まで請求されるなんて踏んだり蹴ったりです。
しかし、色々と調べていくうちに、アルファードという車の持つ「異常なほどの人気とリセールバリュー」は、全損時にも意外な力を発揮することが分かりました。
全損・水没でも価値がゼロとは限らない
私たちが一番驚いたのは、「保険会社から『全損』と判定された車でも、市場価値がゼロになるとは限らない」という事実です。
特に、修理費が時価額を上回る「経済的全損」の場合、車としてはまだ動く状態だったり、修理すれば乗れる状態だったりすることがあります。また、アルファードは海外でも非常に人気が高いため、「日本では修理費が高すぎて直さないけれど、人件費の安い海外に持っていけば直して売れる」という需要が確実にあるのです。
「えっ、あんなにボロボロでも欲しい人がいるの!?」とママは目を丸くしていましたが、これが現実です。保険会社が「価値なし」と判断したからといって、世の中のすべての人が価値なしと見なすわけではないのです。
修理不能車でも値が付くことがある
さらに、物理的に完全に修理不可能な事故車や、エンジンまで浸かってしまった水没車でも諦めるのは早いです。
世の中には、「事故車・水没車・不動車」を専門に買い取ってくれる業者が存在します。彼らは車を走る乗り物としてではなく、「部品取り車」や「資源」として見ています。
アルファードの無事だったドア一枚、ヘッドライト片方、あるいは希少なハイブリッドバッテリーなど、使える部品だけを取り外して販売ルートに流すノウハウを持っているのです。
「もし保険金が足りなくて借金が残りそうになっても、このボロボロの車自体が何十万円かで売れれば、自己負担を減らせるかもしれないってこと?」
ママのその言葉通りです。全損でパニックになっていると「早く処分しなきゃ」とディーラー任せにしてしまいがちですが、「事故車専門の買取査定」という選択肢を知っておくことで、最悪の事態における家計のダメージを少しでも和らげることができるかもしれません。
勝手に売却せず所有権と残債を確認する
「じゃあ、もしもの時はすぐに買取業者に電話して高く売ってもらおう!」とママは少し明るい顔になりましたが、ここで私から強めのストップをかけました。残クレを利用している私たちが、絶対に忘れてはいけない大原則があるからです。
それは、「残クレの車を勝手に売ってはいけない」というルールです。
先ほども触れましたが、残クレの車の所有者は私たちではなく、販売店やローン会社です。たとえボロボロの水没車であっても、他人の持ち物を勝手に売却することは法律上できません(横領罪に問われる可能性すらあります)。
もし事故車を買取業者に売りたい場合は、必ず以下の順番を守る必要があります。
- ローン会社・販売店に「事故車買取業者に査定してもらい、そのお金をローン返済に充てたい」と相談し、了承を得る。
- 保険金や車の売却代金、足りない場合は自己資金を合わせてローンを一括返済する。
- ローン会社から「所有権解除(名義変更の許可)」の書類をもらう。
- 初めて買取業者に車を引き渡せる。
「うわぁ、なんだか手続きがややこしそう……」とママは顔をしかめましたが、良心的な事故車買取業者であれば、こうしたローン会社とのやり取り(所有権解除の手続きなど)を無料で代行・サポートしてくれます。「全損=無価値」と決めつけず、まずは販売店に相談したうえで、売却可能であれば専門業者に価値を見てもらう、という冷静なステップを踏むことが大切です。
残クレでアルファードに乗るなら契約と保険をセットで考えよう
「残クレって、なんか怖いね……」
一連の仕組みとリスクを理解したママが、ポツリと漏らしました。確かに、車がなくなったのに多額の借金だけが残るリスクを知れば、誰だって怖くなります。
でも、私はこう答えました。「いや、残クレが怖いんじゃなくて、『自分がいくら借金していて、いざという時に保険でいくらカバーできるかを知らないこと』が怖いんだよ」。
今回、夫婦でアルファードの全損リスクについてとことん調べ、シミュレーションしたことで、私たちの中の「漠然とした恐怖」は「具体的な数字と対策」に変わりました。
残高を把握し、保険の補償内容(水没は対象か、金額は足りているか)をセットで見直す。そして万が一の時は、パニックにならず保険会社とローン会社へ順番に連絡を入れる。これさえ知っていれば、残クレでのカーライフは決して危険なものではありません。
もしあなたが今、すでに事故や水没に遭われてこの記事を読んでいるなら、まずは安全を確保し、落ち着いて保険会社と販売店へ連絡してください。
そして、これから台風シーズンを迎えたり、今後の備えとして読まれている方は、ぜひ今週末、夫婦でテーブルに向かい合って、ローン残高の画面と自動車保険の証券を見比べてみてください。その少しの手間が、大好きなアルファードとの生活と、大切な家族の家計を守る最強の盾になるはずです。