「うわっ、また車検のハガキ来てる…!いくらかかるのよ、これ!」
キッチンのテーブルに置かれたハガキを見つけて、ママがげんなりした声を上げた。
きたか…。
我が家の怪獣二匹を乗せて毎日奮闘してくれているミニバンも、もうすぐ5年目。あちこちジュースのシミやらお菓子のカスやらで、お世辞にもキレイとは言えない状態だが、まだまだ走ってもらわないと困る。
…と思っていた。
「これさ、前回10万くらいかかったっけ?部品交換とか言われて、結局13万くらい払わなかった?」
「そうよ!『今換えとかないと危ない』とか言われて。今回もどうせ高いんでしょ…」
そうなんだよな。
理屈っぽいうんちく好きのパパとしては、この「車検」という制度、どうにも納得いかない部分がある。もちろん安全のために必要なのはわかる。わかるんだが、出費のタイミングと金額がえぐすぎる。
13万円か…。
この13万円を払って、さらに2年間乗る。
果たして、それが本当に「我が家の家計にとって」最適解なのだろうか?
「なあ、ママ。この車、車検通さずに売るっていうのはどう思う?」
「はぁ!?何言ってんの。車なかったら、明日の保育園の送り迎えどうすんのよ!雨よ!」
「いや、そうじゃなくて!短絡的に考えるな、理屈で考えよう、理屈で。車検費用が浮くだけじゃなくて、"今"売るからこそ、想像以上に高く売れる可能性があるかもしれないだろ?」
「またパパのうんちくが始まった…」
始まったんじゃない、合理的な仮説検証だ。
「車検前に売る」は本当に得なのか? それとも車検を通して乗り潰すのが正解なのか?
サルヂエ家の家計を守るべく、この永遠のテーマに(パパが)白黒つけるべく、徹底的にリサーチ&シミュレーションしてみたぞ!
この記事は、まさに今、手元の車検通知を見て「うわっ…」と思っているあなたにこそ読んでほしい。後悔しないための判断基準を、一緒に検証していこうじゃないか。
結論:車検前は査定額が最も高いタイミングです
「車検が切れる前に売る?当たり前じゃない、車検が残ってたほうが得に決まっ
てるでしょ」
ママはそう言う。確かに、その感覚は間違っちゃいない。
だが、パパが今回調べ上げてたどり着いた結論は、もう少し解像度が高い。
「車検を通した直後」が一番高いわけじゃない。
「車検が切れる直前(=今)」こそが、売却の判断をする上で最も合理的、かつ、査定額(=手元に残るお金)を最大化できる「最後のチャンス」だということだ。
「意味わかんない。残ってる期間が長いほうがいいんでしょ?」
そう、その通り。だからこそ、だ。
理屈を説明しよう。
車検の「残り期間」自体に価値があるという事実
まず大前提として、中古車市場において「車検の残り期間」は、それ自体が金銭的価値を持っている。
考えてみてほしい。もし君が中古車を買う立場だったら、どっちを選ぶ?
- A:価格100万円、車検残り23ヶ月
- B:価格95万円、車検残り1ヶ月(※すぐ車検で13万円かかります)
多くの人はAを選ぶか、Bを選ぶとしても「車検費用(13万)+手間」を考慮して、Aより大幅に安くないと割に合わないと感じるはずだ。
つまり、中古車を買う人にとって「車検残がたっぷりある」ことは、乗り出しの総額を抑えられるという大きなメリットになる。
買取業者は、その「次の買い手」の心理を先読みしている。
彼らが車を買い取った後、どうするか?
そう、再販するんだ。
- 車検がたっぷり残っていれば
- 買い取ってすぐ、そのまま「車検たっぷり!」と謳って店頭やネットに並べられる。
- 商品化(再販)までのスピードが速い。
- 次の買い手もすぐに見つかりやすい。
- =業者も「高く売れる」とわかっているから、強気の査定額が出せる。
- 車検が切れていたら(あるいは、残りわずか)
- 買い取った後、業者が車検を通すコスト(10万~)と手間が発生する。
- そのコストと手間は、当然、買取価格から差し引かれる。
- =査定額はガクンと下がる。
「じゃあ、やっぱり車検を通した直後が一番いいんじゃない?」
ママの言う通り、理論上は「車検満タン(24ヶ月)」の状態が一番価値が高い。
だが、ここで「車検を通すために払った費用」を思い出してほしい。
もし、車検費用に13万円かかったとして、売却時の査定額が車検前と比べて13万円以上アップするか?
答えは、ほぼ「ノー」だ。
車検は、あくまで「公道を走るための許可証」を更新するようなもの。車の性能が上がったり、ピカピカになったりするわけじゃない(※整備はするが)。
業者が買い取った後に車検を通す費用(業者価格)と、我々がディーラーや整備工場に払う費用(一般価格)とでは、そもそも原価が違う。
中古車市場で評価される「車検残の価値」は、せいぜい数万円程度(5~8万くらい)と言われている。
13万円払って、5万円しか査定が上がらないなら…?
そう、8万円の赤字(機会損失)だ。
だから、「車検を通す前」の今、車検費用を払う代わりに、その分を「売却額」として確定させてしまうのが、最も合理的だという結論に至るわけだ。
売り時(今)と買い時(納車待ち)をズラす戦略的メリット
「わかったわよ。車検を通すのは損かもしれないってのは。でも、売っちゃったら、次の車どうすんのよ!?」
ママの最もな懸念だ。
特に最近は、「新車を契約しても、納車は半年後」なんて話がザラだ。
昔は、車の買い替え=「下取り」が主流だった。
ディーラーで新車を契約するのと同時に、今乗っている車を引き取ってもらう。この場合、「売るタイミング」と「買うタイミング」はイコールだ。
この方法だと、納車まで今の車に乗り続けられるから安心だ。
だが、これには大きな落とし穴がある。
「下取り」は、ラクな反面、査定額が安くなりがちだ。なぜなら、ディーラーは新車を売ることが本業であり、中古車買取は専門外。あくまで「新車を買ってくれるなら、古いやつも引き取りますよ」というサービスの一環でしかない。
相場より安く引き取られても、新車の値引きとゴチャ混ぜにされて、結局いくらで売れたのか曖昧にされやすい。
パパは、それが許せない。
理屈で考えるなら、「一番高く売れるタイミング」と「一番安く買えるタイミング」は、別々に追求すべきだ。
- 高く売る(今)
車検が切れる前、つまり「車検残の価値」がまだ残っている「今」、複数の買取業者に査定してもらい、最高値で売却する。
これが「売り時」の最適化だ。 - 安く買う(これから)
売却で得たまとまった現金を元手に、じっくりと次の車を探す。
新車の納車待ちが半年あるなら、その間にゆっくり情報を集め、オプションを吟味し、複数のディーラーで相見積もりを取る。
中古車を探すにしても、焦って「今すぐ乗れる車」に飛びつくと、ロクなことがない。状態の悪い車を高値で掴まされるリスクだ。
これが「買い時」の最適化だ。
「でも、やっぱり車がない期間が困るって言ってるでしょ!」
ママの怒りはごもっとも。
確かに、この「売り」と「買い」のタイミングをズラす戦略には、「車が手元にない期間(=空白期間)」が発生するリスクが伴う。
だが、安心してほしい。
それこそが、今回のリサーチのキモ。
現代には、その「空白期間」を乗り切るための合理的なサービス(代車やカーシェアなど)がいくらでもある。
その具体的な方法と、我が家(サルヂエ家)のような子育て世帯がどう乗り切るべきかのシミュレーションは、この後じっくり解説しよう。
今はまず、「車検前に売る」という選択肢が、経済的合理性において非常に優れている、という事実を理解してほしい。
なぜ車検前が売り時なのか?査定額が下がる3つの理由
「車検を通すと損するかも、って理屈はわかった。でもさ、パパ。そんなに焦らなくても、もし車検が切れちゃっても、その後で車検を通してから売ればいいんじゃないの?同じことでしょ?」
…ママ、それは致命的な勘違いだ。
パパの徹底リサーチによれば、車検前の「今」を逃した場合、査定額が目に見えて(しかも確実に)下落する「3つの時限爆弾」が待っている。
なぜ我々が「今」決断すべきなのか。その理由を、うんちく好きのパパが理詰めで解説しよう。
車検が残っている今なら、買取業者も「すぐに再販できる、状態の良い車」として、前向きな査定をしてくれる。
だが、その「期限」を一日でも過ぎてしまったら…?事態は一変する。
① 車検切れ=再査定&移動コストで下がる
「あ、うっかり車検切らしちゃってた!」
日常が忙しいと、ありえない話じゃない。だが、車の売却という観点では、これが最悪のシナリオの一つだ。
なぜなら、車検が切れた車は「公道を走れない車」だからだ。
ただの鉄の塊、とは言わないが、法的には「許可なく移動できない置物」と同じ扱いになる。
これが査定額にどう響くか?
- 1. 積載車(キャリアカー)の費用が引かれる
公道を走れないのだから、買取店に自分で運転して持ち込むことができない。
業者が査定・引き取りに来る場合、専用の積載車を手配する必要がある。この積載車のチャーター費用(地域や距離によるが、安くても1万~、場合によっては数万円)は、当然「余計なコスト」として、査定額から容赦なく差し引かれる。
車検が残っていれば、業者はガソリン代だけで自走して引き取れたはずなのだから。
- 2. 「整備不良」のリスクを疑われる
「車検が切れている」という事実は、業者に「この車、もしかしてちゃんと動かないんじゃ…?」「長期間放置されてたのでは?」という疑念を抱かせる。
エンジンが一発でかかるか、電装系は生きているか。確認すべきリスクが多すぎる。
業者は商売だ。リスクがある車(=買い取った後に修理費用がかさむかもしれない車)に対して、高い査定額をつけるはずがない。
結果として、「念のため」の大幅減額、あるいは最悪の場合「買取不可」という判断が下される可能性もある。
たった一日、車検が切れただけで、車は「価値ある中古車」から「引き取りコストのかかるリスク物件」へと転落しかねないんだ。
② 車検後は「費用 sunk」で売却心理が弱まる
これは、コストの話ではなく、「人間心理」の話だ。
そして、ママが一番陥りやすいワナかもしれない。
「ああ、今回も車検高かった…。13万円も払っちゃったわ…」
こうなると、人間の心理はどう動くか?
答えは「今すぐ売りたい」ではなく、「売れなくなる」だ。
経済学や心理学でいう「サンクコスト(埋没費用)の呪縛」というやつだ。
人は、一度支払ってしまったコスト(=サンクコスト)を「もったいない」と感じ、それを取り戻そうとするか、その後の行動を(合理性を欠いてでも)正当化しようとする傾向がある。
今回のケースで言えば、
「13万円も払って車検を通したんだから、次の車検(2年後)までしっかり乗らないと、払った13万円がもったいない!」
という思考に、ほぼ100%陥る。
だが、冷静に理屈で考えてみよう。
その13万円は、車検を通した瞬間に「過去のコスト」として確定している。
もし、車検を通した1ヶ月後に「やっぱり売ろう」と思っても、査定額が13万円まるまる上乗せされることは、さっき説明した通り(H2-1参照)まず無い。
車検を通すことで、「売る」という合理的な選択肢が、「もったいない」という感情によって封じられてしまうんだ。
車検を通す前に査定に出していれば、「車検費用13万円 vs 売却額90万円」という冷静な比較ができたはずだ。
だが、車検を通してしまった後では、「13万円も払ったんだから」という呪縛が、あと2年間、ズルズルと判断を先延しにさせる。
そして、その2年間で、車の価値は(13万円どころか)さらに数十万円、確実に下がっていくというのに…。
③ 車検後=次の故障リスクが一気に上がる
「まあ、サンクコストだか何だか知らないけど、車検を通せば、とりあえず次の2年間は安心なんでしょ?整備もしたんだし」
ママはそう言うが、それも大きな誤解だ。
パパも調べて驚いたんだが、車検は「次の2年間の動作を保証するもの」では全くない。
車検は、あくまで「その検査の時点」で、国が定めた安全・環境基準(保安基準)を満しているかどうかをチェックするだけのものだ。
極端な話、車検に合格した翌日に、エアコンが壊れようが、パワーウィンドウが動かなくなろうが、それは車検とは一切関係ない。
思い出してほしい。
我が家の車も5年目。子育て世帯の車は走行距離も伸びがちだ。
車は「機械部品」と「電子部品」の塊だ。年数が経てば、当然、故障リスクは指数関数的に上がっていく。
【車検項目 vs 故障すると高額な部品】
| 検査項目 | 車検で主にみられる点 | 故障すると高額だが車検ではスルーされがちな部品 |
|---|---|---|
| ブレーキ | 効き具合、パッド残量 | (車検で厳しく見られる) |
| 排気ガス | CO/HC濃度 | (車検で厳しく見られる) |
| エンジン | オイル漏れ(※ひどい場合) | オルタネーター(発電機)、ウォーターポンプ、ラジエーター(冷却系) |
| 電装系 | ライト類の点灯 | エアコン(コンプレッサー)、パワーウィンドウ、ナビ |
| 足回り | ブーツ類の破れ | ダンパー(ショックアブソーバー)のヘタリ |
見てくれ。車検に通ったからといって、エアコンや発電機が「あと2年持ちます」というお墨付きは、誰もくれないんだ。
車検に13万円払う。
↓
その3ヶ月後、真夏にエアコンが故障。修理に10万円。
↓
さらに半年後、エンジンのかかりが悪く、オルタネーター交換で8万円。
これが、車検を通した後に「乗り続ける」という選択がはらむリアルなリスクだ。
車検費用を払う前の「今」売却するということは、これらの「次にいつ来るかわからない高額修理のリスク」を、丸ごと手放すことでもあるんだ。
「車検切れのコスト増」「サンクコストの心理ロック」「車検後の故障リスク」。
この3つの時限爆弾が作動する前に、冷静に判断できるのが、車検見積もりが手元にある「今」なのだ。
この3つのケースは“車検通すほど損”します
「なるほど…。車検を通す前が『売り時』だって理屈はわかった。じゃあ、我が家の車は?この5年目のミニバンは、本当に今売っちゃうべきなの?まだ乗れるんじゃないの?」
ママの言う通りだ。
理屈(セオリー)がわかったところで、それを「我が家」という具体例(ケース)に当てはめてみなければ、意味がない。
サルヂエ家のパパとして、家計を預かる身として、断言しよう。
「まだ乗れる」と「乗り続けるべき」は全く違う。
特に、これから挙げる「3つのケース」に一つでも当てはまるなら、車検を通すのはハッキリ言って“損”だ。
車には「価値がガクンと落ちる」明確なタイミングが存在する。
それは「人気がなくなる」タイミングと言い換えてもいい。
次の買い手がつきにくくなる(=業者が再販しにくくなる)ボーダーラインが、以下の3つだ。
① 3回目(7年目)/4回目(9年目)の車検
「え、うちはまだ2回目(5年目)だから、次(7年目)まで大丈夫ってこと?」
いや、違う。逆だ。
「3回目(7年目)の車検を迎える前が、高値で売れる最後のチャンス」だということだ。
中古車市場には「3年落ち」「5年落ち」「7年落ち」という、大きな価格下落の節目がある。
特に「7年落ち」は、車の価値を大きく左右する。
- 7年落ち(3回目車検)
- 一般的に、メーカーの「特別保証」(エンジンやミッションなど重要部品の保証)が5年で切れるため、7年目にもなると「いつ壊れてもおかしくない」というイメージが強くなる。
- 7年も経つと、2回はモデルチェンジが行われている可能性があり、「型落ち感」が一気に強まる。
- =中古車としての需要(人気)がガクンと落ちる。
- 9年落ち(4回目車検)
- ここまで来ると、もはや「10年落ち」として扱われる。
- 日本では「車は10年10万km」という意識が根強く、9年落ちの車を積極的に買おうという層はかなり限られる。
- =買取価格も、部品代+α程度の「底値」に近づいていく。
もし君の車が、今5年目の車検(2回目)を迎えているなら、次の7年目(3回目)の車検が来る前に売却するのが、最も賢い選択になる可能性が極めて高い。
今ならまだ「高年式の人気車種」として扱われるが、あと2年乗って7年目を迎えた瞬間、「古い車」の仲間入りだ。
② 走行距離が10万kmに近づいている
「走行距離?うちはまだ7万kmくらいよ?」
なるほど。年間1万km以上走ってるな。なかなかのペースだ。
つまり、次の車検(2年後)には、7万km + 2万km = 9万km。
その次の車検(4年後)には、11万kmだ。
「10万km」の壁は、日本の中古車市場において、年式以上に強力なデッドラインとして機能している。
パパも中古車を探すとき、まず「走行距離10万km以下」で絞り込む。ママもそうじゃないか?
- 8万km台まで
- まだ「バリバリ現役」として扱われる。買取業者も「10万km以下」として再販できるため、強気の査定が出やすい。
- 9万km台
- 「もうすぐ10万km」と見なされ、査定額は下落し始める。
- 10万km突破
- 「多走行車」の烙印を押される。査定額は一気に下がる。
- なぜなら、タイミングベルト(※車種による)やウォーターポンプなど、10万km前後で交換が推奨される高額部品の交換時期が迫っているからだ。
- 業者は、その「交換費用」をあらかじめ査定額から差し引いて買い取る必要がある。
もし今、走行距離が7万km、8万kmに達しているなら、まさに「今」が売り時だ。
10万kmの大台に乗せてしまう前に、つまり「次の車検を通す前」に売却するのが、最も査定額を高く保てる判断になる。
③ 事故歴(修復歴)がある、またはボディの劣化が目立つ
「事故なんてしてないわよ!…あ、でも、昔パパがコンビニの駐車場でガリッてやったのは?」
うっ…(汗)
そう、それだ。
軽い擦り傷(バンパーのガリ傷)くらいなら、査定にそこまで大きく響かないことも多い。
だが、問題は「修復歴」だ。
これは、車の骨格(フレーム)部分を修理・交換したことがある車を指す。
例えば、ドアやバンパーを交換しただけでは「修復歴アリ」にはならないが、その内部のピラーやインナーパネルまで損傷が及んで修理していると、「修復歴アリ」と判断される。
この「修復歴アリ」の車は、中古車市場では致命的だ。
安全性や走行性能への不安から、買い手が極端に少なくなる。
当然、査定額は「修復歴ナシ」の同じ車種・年式と比べて、数十万円単位で安くなる。
もし、過去にそういった修理をした覚えがあるなら…。
年数が経てば経つほど、その価値は下がる一方だ。
また、事故はしていなくても、青空駐車でボディの塗装(特にクリア層)が剥げてきたり、ヘッドライトが黄ばんでカサカサになっていたりする場合も要注意だ。
「見た目のコンディション」は、査定額を大きく左右する。
7年、9年と乗り続けて、さらにボディの劣化が進んでから売るよりも、「まだキレイな5年目」の今、売却を検討するほうが、間違いなくダメージは少ない。
費用比較|車検を通す vs 売る どちらがお得?
「パパの理屈はもういいわよ。わかったから。で、結局、数字は? いくら得するの?」
「車検代の13万円をケチって今売るのと、13万円払ってあと2年乗るの、どっちがサルヂエ家にとってプラスなのよ。そこをハッキリさせてよ!」
ママの直感は鋭い。
そうだ。結局、我々が知りたいのは「どっちが家計を楽にするか」という一点に尽きる。
理屈(H2-1〜H3)は、すべてこの「結論=数字」を導き出すための前提知識に過ぎない。
よし、パパの本領発揮だ。
我が家のミニバン(5年目・7万km)をモデルケースに、2年間の「家計シミュレーション」を敢行しようじゃないか。
まず、前提条件を整理しよう。
これはあくまでサルヂE家のシミュレーションだが、近い年式・走行距離の車に乗っているなら、大いに参考になるはずだ。
【サルヂE家:シミュレーションの前提】
- 今の車:5年目ミニバン(走行距離 7万km)
- A:車検見積もり額:13万円(法定費用+整備費)
- B:今の売却査定額(予測):90万円
- ※5年落ち・7万kmのミニバン相場から予測。
- C:2年後の売却査定額(予測):50万円
- ※7年落ち・9万kmになった場合の予測。H2-3で解説した通り、7年落ち&10万km手前で価値は急落する。
さあ、この数字を使って、「A:車検を通す」場合と「B:今売る」場合の、2年後の「手元に残るお金(=資産価値)」を比較してみよう。
衝撃の事実:「車検を通す」は2年間で53万円の“損”
「え?どういう計算よ?」
ママはまだピンと来ていない顔だ。
よく聞いてくれ。これは「手品」じゃない、「算数」だ。
Aパターン:「車検を通してあと2年乗る」を選択した場合
- 今、財布から出ていくお金:
車検費用として -13万円 - 2年後の資産価値:
7年落ち・9万kmになった車を売却。手に入るお金は +50万円 - 2T年間のトータル収支:
+50万円(2年後の売却額) - 13万円(今の車検代) = +37万円
このAパターンだと、2年後に手元に残る(であろう)キャッシュは37万円だ。
「まあ、そんなもんじゃない?」と思うかもしれない。
だが、ここで忘れてはいけないのが、H2-2で解説した「故障リスク」だ。
この37万円という数字には、「もし2年間のうちにエアコンが壊れたら(-10万)」「もしオルタネーターが壊れたら(-8万)」という、突発的な修理費用が一切考慮されていない。
つまり、Aパターンは「2年後に37万円(※ただし修理費で減る可能性大)」という、不確定な未来に賭ける選択だ。
Bパターン:「今、売却する」を選択した場合
- 今、財布から出ていくお金:
車検を通さないので 0円 - 今の資産価値:
5年落ち・7万kmの車を今すぐ売却。手に入るお金は +90万円 - 2年間のトータル収支:
+90万円
このBパターンだと、「今」手元に90万円のキャッシュが確定する。
もちろん、車はなくなる。
だが、重要なのは、AパターンとBパターンの「差額」だ。
Aパターン(乗り続ける):+37万円(+故障リスク)
Read: Bパターン(今売る):+90万円(リスクゼロ)
その差額、なんと 53万円。
「…53万!?」
ママがようやく声を上げた。
そうだ。これが現実だ。
「車検を通す」という行為は、車検代の13万円だけを払っているように見えて、実は「2年間でさらに下がる車の価値(=資産の目減り)」という、目に見えないコスト(90万 - 50万 = 40万)も同時に受け入れていることになる。
13万円(車検代) + 40万円(2年間の価値下落) = 53万円。
これが、「車検を通してあと2年乗る」ために、我々が(気づかないうちに)支払っている「本当のコスト」の正体だ。
車検見積もりが出た今こそ「売却査定」をすべき理由
「53万円って…、ちょっと、パパ。その『今の売却額90万円』って、本当なの?パパの希望的観測じゃないの?」
鋭い指摘だ。
その通り。このシミュレーションの最大のキモは、
「B:今の売却査定額(予測)」が、本当に90万円なのか、という一点に尽きる。
もし、今の査定額が70万円にしかならないなら、
Aパターン:+37万円
Bパターン:+70万円
差額は33万円だ。これでも大きいが、53万円よりはインパクトが小さい。
逆に、もし今の査定額が100万円だったら?
Aパターン:+37万円
Bパターン:+100万円
差額は63万円に開く。
つまり、我々が今、車検のハガキを握りしめて「どうしよう…」と悩んでいる時点で、最も優先すべき行動は一つしかない。
「車検の見積もり(13万円)」と「今の売却査定額(いくら?)」を、天秤にかけることだ。
車検工場に「13万円です」と言われて、「はい、お願いします」とハンコを押すのは、自分の車が「今いくらで売れるか」を知らないまま、53万円(かもしれない)の損失を受け入れる行為に等しい。
パパは、そんな理屈に合わないことはしたくない。
だからこそ、「今」なんだ。
車検を通す前に、無料の一括査定サービスを使って、複数の業者に「ウチの車、今いくら?」を聞いてみる。
そこで提示された「最高額」こそが、我が家のシミュレーションにおける「B:今の売却査定額」になる。
その金額を見てから、もう一度、ママと決めようじゃないか。
「車検代13万円を払って、高額修理のリスクを抱えながらあと2年乗る」のか、
「今、〇〇万円を受け取って、53万円(かもしれない)の損失を回避する」のか。
どちらが合理的な判断か。
Code: 査定額を見れば、自ずと出るはずだ。
売却を先にするメリット|納車待ちでも負担ゼロは可能か?
「はぁ…。53万か…。それは、確かに、すごい差ね…」
ママも、さすがにこの数字には言葉を失っている。
「でもさ、パパ。さっきから私がずっと心配してること、忘れてない?」
「売るのが得なのはわかった。でも、売った後の生活はどうすんのよ!」
「新車だって、どうせ半年待ちとかでしょ?保育園の送り迎え、雨の日の買い物、週末の公園、車なしでどうしろって言うのよ!」
そうだ。
これこそが、直感的なママが(そして多くの人が)、「車検前に売る」という合理的な選択肢から目をそむけてしまう最大の理由だ。
「納車待ち」の間の、「車なし生活(空白期間)」への恐怖。
だが、理屈のパパは、もちろんその対策もリサーチ済みだ。
売却を先に決断するからこそ得られるメリットと、その「空白期間」を驚くほど低コスト(あるいは負担ゼロ)で乗り切る方法を、具体的に解説しよう。
H2-1でも触れたが、売却と購入を切り離す「分離戦略」は、家計へのメリットが非常に大きい。
最大のメリットは、「下取り」の曖昧な価格交渉から解放され、「買取」として最高値で売却できることだ。
だが、メリットはそれだけじゃない。
売却を先にすることで、「次の車選び」にも多大な好影響があるんだ。
売却益(キャッシュ)が手元にあると、次の車選びが超有利に
想像してみてほしい。
今、手元に「90万円」の現金(売却益)が振り込まれた状態を。
この「まとまったキャッシュ」があるという事実は、次の車を買うときの交渉において、最強の武器になる。
- 新車ディーラーにて
- 「現金一括で払います」という客は、ローン審査の手間も、貸し倒れのリスクもない、最上級の「優良顧客」だ。
- ディーラー側も早く契約をまとめたいため、オプションサービスや値引き交渉において、我々が圧倒的に有利な立場に立てる。
- 「下取り」だと、この90万円が新車の頭金に充当されるだけで、我々が自由に使える現金にはならない。しかも、その90万円も、新車値引きとゴチャ混ぜにされて、結局いくらだったのか曖昧にされがちだ。
- 中古車販売店にて
- なおさらだ。中古車は一点モノ。
- ローンの審査を待っている間に、現金払いの客に横からかっさわれる、なんてことは日常茶飯事だ。
- 「今、ここに現金がある」という強みは、「この車、ちょっと安くなりませんか?」という交渉を可能にする。
先に売ってキャッシュを確定させることは、次の車選びの「選択肢」と「交渉力」を最大化することに直結するんだ。
サルヂE家流「車なし期間」の乗り切り術(代車+カーシェア)
「交渉が有利になるのはわかった。でも、肝心の『空白期間』はどうすんのよ!」
ママの焦りはもっともだ。
特に、我が家のような「怪獣二匹」を抱えた子育て世帯にとって、車なし期間は死活問題だ。
だが、現代には、この問題を解決するサービスがいくらでもある。
理屈で考えよう。必要なのは「マイカー」であることか?いや、「移動手段」であることだ。
サルヂエ家がシミュレーションした「乗り切り術」は、以下のハイブリッド戦略だ。
1. 買取業者の「代車サービス」をフル活用する
これが最重要だ。
実は、大手の車買取業者の中には、「売却契約をしたら、次の車が来るまで(あるいは一定期間)無料で代車を貸し出します」という神サービスを提供しているところがある。
(※例:カーネクスト、ガリバーなど ※サービス内容は時期や店舗、条件による)
一括査定で複数の業者を呼ぶとき、価格交渉と同時に、この「代車サービスの有無」を必ず確認する。
「A社は90万だけど代車なし、B社は88万だけど納車まで代車OK」
これなら、迷わずB社だ。
2万円の差額なんて、数ヶ月分のレンタカー代で簡単に吹っ飛んでしまう。
2. 「カーシェア」で穴を埋める
「でも、代車が軽自動車だったら、家族4人じゃキツいわよ…」
そういう時こそ、カーシェアだ。
幸い、我が家の近所(徒歩5分)にも、タイムズやカレコのステーションがある。
- 平日の送り迎え:代車(無料)で対応
- 週末のまとめ買い:カーシェアでミニバン(6時間パック 約4,000円)を利用
- 雨の日のちょっとした外出:タクシー(月数回なら、車の維持費より安い)
3. 「サブスク」や「短期中古車」も選択肢に
もし、新車の納車が「半年以上」と長期化する場合。
この場合は、「車のサブスク(KINTOなど)」や「短期リース」を利用する手もある。
月額3〜5万円程度で、新車や状態の良い中古車を「つなぎ」で利用できる。
H2-4のシミュレーションを思い出してほしい。
我々は「今売る」ことで、「53万円」の損失を回避しているんだ。
仮に、空白期間の6ヶ月間、毎月4万円のカーシェア代やサブスク代がかかったとしても、
4万円 × 6ヶ月 = 24万円。
53万円(回避した損失) - 24万円(つなぎ費用) = +29万円。
結局、29万円もプラスになる計算だ。
どうだ、ママ。
「車がないと困る」という感情的な不安は、「月4万円のコストで回避できる」と数字でわかれば、乗り切れる気がしないか?
負担ゼロ、どころか、お釣りが来るんだ。
【30秒チェック】車検前に売るべき人の特徴診断
「うーん…、理屈もわかった。シミュレーションもわかった。車なし期間の乗り切り方もわかった。…でも、決断できない!」
ママが頭を抱えている。
無理もない。理屈(パパ)と感情(ママ)が、頭の中で激しくぶつかり合っているんだろう。
「本当に今売っちゃっていいのか」
「13万払って、あと2年乗ったほうが気楽なんじゃないか」
わかる。
情報は出揃った。あとは「我が家はどっちだ」と決めるだけだ。
よし、そんなママ(と、この記事を読んでくれている君)のために、サルヂエ家特製の「30秒チェックリスト」を用意した。
理屈はもういい。直感でいいから、YESかNOかで答えてみてくれ。
Q1. 次の車検が「3回目(7年目)」または「4回目(9年目)」である。
(※2回目(5年目)の人も、次の車検が3回目になるので「YES」とカウントしてOK)
Q2. 今の車の走行距離が、7万kmを超えている。(または10万kmが近い)
Q3. 今回の車検の見積もり総額が「10万円」を超えている。
Q4. 最近、「エアコンの効きが悪い」「変な音がする」「燃費が落ちた」など、車の“衰え”を感じる瞬間がある。
Q5. 子供が大きくなって手狭になった、逆に子供が独立した、など、今の車が「ベストなサイズじゃないかも」と感じている。
さあ、どうだった?
YESはいくつあっただろうか?
その数こそが、「今すぐ売るべきか、否か」の合理的な答えだ。
診断結果:YESが3つ以上なら「今すぐ売却」が合理的
✅ YESが 0個 のあなた
【判定:青信号】まだ乗り続けてもOK!
素晴らしいコンディションだ。
年式も新しく、走行距離も浅い。車検費用も安いなら、まだ「乗り続ける」メリットのほうが大きいかもしれない。
ただし!
今の価値が永遠に続くわけじゃないことは、忘れないでほしい。
次の車検(2年後)には、必ず「売却査定」をとって、今回この記事で学んだシミュレーション(H2-4)を実行してくれ。
✅ YESが 1~2個 のあなた
【判定:黄信号】“損”を覚悟で乗るか、今「価値」を知るか
まさに、今回の我々サルヂエ家(5年目・7万km・車検13万)と同じ、「最大の悩みどころ」にいるのが君だ。
H2-3で解説した「価値がガクンと落ちる」ボーダーラインの一歩手前にいる。
車検を通す選択も、もちろんアリだ。
だが、その場合、H2-4でシミュレーションした「2年間で53万円(かもしれない)の資産価値が消える」という事実を受け入れる覚悟が必要だ。
パパからの提案はこうだ。
決めるのはまだ早い。まず、「今の正確な価値(査定額)」を知ることから始めよう。
「車検代13万」と「今の査定額〇〇万」を天秤にかけてこそ、合理的な判断ができるんだから。
✅ YESが 3個以上 のあなた
【判定:赤信号】今すぐ「売却査定」を!車検は損です!
もし、YESが3つ以上ついたなら…。
はっきり言おう。
君が車検を通すのは、合理的に考えて“損”だ。
- 「7年落ち・10万km手前・高額車検・故障リスク」
- 「9年落ち・多走行・高額車検・コンディション不安」
この状態の車に、10万円以上の車検費用を払うのは、「サンクコストの呪縛(H2-2参照)」に自らハマりに行くようなものだ。
H2-4のシミュレーションで「53万円の差」が出たが、YESが3つ以上の君の場合は、その差額が60万、70万とさらに開いていく可能性が極めて高い。
車検の予約をする前に、今すぐ、スマホで一括査定を申し込むべきだ。
手遅れになる前に、「今ならいくらになるのか」を確定させるんだ。
その金額が、君の「次の行動」を100%後押ししてくれるはずだ。
まとめ:車検見積もりが出た“今”がラストチャンス
「…診断結果、YES、3つだったわ」
「5年目(Q1)、7万km(Q2)、車検13万(Q3)…。あ、そういえば最近、スライドドアの開きがちょっと遅いかも(Q4)。…4つだわ」
ママが、キッチンカウンターに置かれた車検のハガキを、さっきとは違う目で見つめている。
もうそれは「高額な請求書」ではなく、「53万円の損失を回避するためのラストチャンス告知」に見えているはずだ。
パパのうんちくが、ようやくママの直感と、そして家計の現実と結びついた瞬間だな。
長々と理屈をこね回してきたが、サルヂエ家(と、この記事を読んでくれた君)が、車検前に後悔しないために取るべき「合理的な行動」は、驚くほどシンプルだ。
結局、我々が迷う理由は、「判断材料」が足りない**からに尽きる。
今、手元にあるのは「車検費用:13万円」という片方の情報だけ。
これでは、ママじゃなくても「高いなぁ。でも、払うしかないか…」と思考停止してしまう。
だが、パパの徹底リサーチで、我々はもう知ってしまった。
- 車検前は、最も査定額が高くつく「売り時」であること。(H2-1)
- 車検を通すと、「サンクコストの呪縛」と「次の故障リスク」を背負い込むことになること。(H2-2)
- 特に「7年目」「10万km」などの節目が近い車は、車検を通すほど“損”が確定すること。(H2-3)
- 「乗り続ける」選択は、2年間で「53万円」(我が家の場合)の資産価値を失うのと同じかもしれないこと。(H2-4)
- 納車待ちの「車なし期間」は、買取業者の代車やカーシェアを使えば、回避した損失(53万)の範囲内で十分乗り切れること。(H2-5)
これだけの理屈とデータが揃ったんだ。
我々がやるべきことは、ただ一つ。
「車検の見積もり」と「売却の査定額」を、同じテーブルに並べて比較することだ。
「13万円払って乗り続ける」未来と、「90万円(かもしれない)を受け取って乗り換える」未来。
どちらが合理的か?
どちらがサルヂエ家の家計を、そして次の2年間の家族の笑顔を守れるか?
「パパ、スマホ貸して」
ママが、いつになく真剣な顔で言った。
「車検、予約するの?」
「バカ言わないでよ。“査定”よ、査定! 53万よ、53万!」
どうやら、我が家の家計防衛ラインは、無事に守られたようだ。
君も、その手元の車検通知が「サンクコスト」に変わってしまう前に、まずは「今の価値」を知ることから始めてみてくれ。