「ねえ、パパ。そろそろウチの車も買い替え時じゃない?子供たちも大きくなって、あの怪獣たちが後部座席で暴れると、もう狭くて狭くて!」
「ふむ。確かに、最近のあいつらの暴れっぷりはスペース効率の悪化を顕著に示しているな。次の『車の買い替え』企画のテーマとしても妥当だろう」
「でしょ!でもさ、車買うのっていいんだけど、あの…『値引き交渉』ってやつ、正直ちょっとめんどくさいんだよね…。あの探り合いみたいな空気、苦手だわぁ」
「ママはまたそんな直感的な感想を…。だが、一理ある。あのプロセスを『めんどくさい』と感じる層が一定数存在することは、市場データを見ても明らかだ」
「理屈はいいのよ!要は、高い買い物だから少しでも安くしたいけど、ギスギスした交渉はしたくないってこと!パパ、なんかいい方法ないの?」
「うむ。いいだろう。ならばこそ、我々サルヂエファミリーのコンセプト『なんでも自分達で調べてやってみる』の出番だ。単に『めんどくさい』で思考停止するのではなく、なぜ値引きが発生するのか、その構造(ロジック)と鉄板フローを理解すれば、ママのような交渉が苦手な人でもスマートに、かつ合理的に新車を安く買うことができるはずだ」
「お、パパのうんちくが始まった。でも、それで安くなるなら聞くわ!」
「よろしい。今回は、我々が徹底的に調べ上げた『新車値引き交渉の鉄板フロー』について、交渉が苦手なママでも実践できるコツを交えて、体当たり検証レポートをお届けしよう!」
そもそも“新車の値引き”って本当にあるの?
「ねえパパ。そもそもさ、あのピカピカの新車を『値引きしてください』って言うの、なんかこっちが無理やりゴネてるみたいで、やっぱり気が引けるんだけど…」
「ふむ。ママのその感覚は、多くの消費者が抱く心理的ハードルの一つだな。だが、結論から言えば、新車の値引き交渉は決して『悪いこと』ではないし、ディーラー側も交渉されること自体を織り込み済みだ」
「え、そうなの? 定価で売ってるんじゃないの?」
「そこが今回の『サルヂエ』ポイントだ。まずは、なぜ値引きが可能なのか、その『構造』から解き明かしてみよう」
ディーラーの利益構造と「値引き」が可能な理由
「パパ、解説よろしく。難しくしないでよ?」
「うむ。かいつまんで説明しよう。まず理解すべきは、我々が支払う『車の価格』と、ディーラー(販売店)の『利益』の関係性だ」
我々が新車を買う時、見積もりには大きく分けて以下の3つが記載されています。
- 車両本体価格:車の基本的な値段。
- メーカー/ディーラーオプション:カーナビやフロアマットなど、追加で装備するものの代金。
- 諸費用:税金や保険料、登録手続きなどの代行費用。
「うんうん、それはなんとなく分かるわ」
「ポイントは、このうち『1. 車両本体』と『2. オプション』には、ディーラーの利益(=マージン)がしっかり含まれているという点だ。メーカーから仕入れた価格に、彼らの利益を乗せて販売しているわけだな」
「あ、そっか。八百屋さんが野菜を仕入れて売るのと同じね」
「その通りだ。そして、その『利益(マージン)』の中から、どれだけをお客さんに還元(=値引き)するか、という裁量権がディーラーにはある。これが『値引きの原資』だ。だから、我々が値引きを求める行為は、彼らの利益をゼロにしろと言っているわけではなく、そのマージン幅の中で『もう少し安くしてもらえませんか?』と調整をお願いしているに過ぎない」
「値引き交渉=悪いこと」ではない理由
「なるほどね…。じゃあ、ディーラーの人は『うわっ、値引き交渉してきたよ…』って嫌な顔しない?」
「そこが面白いところでな。むしろ、ディーラー側にも『値引きしてでも売りたい』事情があるんだ」
「え? なんで? 高く売れる方がいいじゃない」
「確かに、1台あたりの利益は多い方がいい。だが、ディーラーはそれ以上に『販売台数』を重視している。なぜなら、メーカー(トヨタやホンダなど)から設定された『今月は〇〇台売ってください』という販売目標(ノルマ)を達成すると、メーカーから報奨金(インセンティブ)がもらえる仕組みになっていることが多いからだ」
「じゃあ、仮に1台あたりの利益を少し削って(=値引きして)でも、目標台数をクリアした方が、トータルで儲かるってこと?」
「察しがいいな、ママ。その通りだ。だから、我々客側が『少し安くなれば買うんだけどな』という姿勢を見せることは、ディーラー側にとっても『目標達成のために、あと一台を売るチャンス』になる。値引き交渉は、客とディーラー双方の利害を一致させるための、合理的な『調整』の場なんだ。悪いことどころか、経済活動として極めて自然な行為と言える」
今どきの値引きの幅と限界とは?
「理屈はわかったわ。じゃあパパ、一番大事なこと聞くけど、ぶっちゃけ、いくらまで安くなるの? 100万円とか?」
「はは、ママは一気に結論に飛びたがるな。残念ながら、いきなり100万円引き、というのは非現実的だ。値引きには当然、相場と限界がある」
「ちぇっ。じゃあいくらよ」
「一般的に、車両本体価格の5%〜10%あたりが、現実的な値引き交渉の目安と言われている。300万円の車なら、15万円〜30万円といったところか。ただし、これはあくまで目安だ」
「目安って?」
「例えば、以下のような要因で値引きの幅(値引き余地)は大きく変動する」
| 変動要因 | 値引きの傾向 | パパのうんちく(理由) |
|---|---|---|
| 人気車種(例:N-BOX、ヤリス) | 値引きは渋め | 放っておいても売れるため、ディーラーは強気。 |
| モデルチェンジ直前 | 値引きは大きめ | 在庫を売り切りたい。「新型が出たら旧型は売れなくなる」ため。 |
| 競合車種が多い(例:ミニバン) | 値引きは大きめ | 他社に客を取られるくらいなら…と値引き合戦になりやすい。 |
| 決算期(3月、9月) | 値引きは大きめ | まさに『販売台数』が欲しい時期。ノルマ達成のためのラストスパート。 |
「なるほど〜。買う時期や車種によって、もらえる『おまけ』が変わるみたいな感じね」
「うむ。だから、やみくもに『100万引け!』と要求するのは、ただのクレーマーだ。しかし、構造を理解した上で『今は決算期ですし、ライバルの〇〇とも迷っていて…』と合理的な理由で交渉すれば、ディーラーも『この客は分かっているな』と、真剣に『値引きの原資』を探し始めてくれる。これが、次のステップで解説する『鉄板フロー』の基本になるんだ」
これが鉄板!新車値引き交渉の5ステップ
「パパ、理屈はもういいから、早くその『鉄板フロー』とやらを教えてよ! 私でもできるやつね!」
「うむ。ここからが本題だな。ママのような交渉が苦手な人でも、ギスギスさせずに、スマートに値引きを引き出すための手順を5つのステップで解説しよう。これは我々サルヂエファミリーが導き出した、論理的な最適解だ」
「なんか難しそう…。大丈夫かしら」
「心配無用だ。ポイントは『交渉』というより『準備』と『情報戦』だ。このフロー通りに進めれば、ディーラー側も『この客は本気だ』と認識し、自然と良い条件(値引き)を引き出しやすくなる」
① 競合車種と販売店をリストアップする
「まず、ステップ1。これが全ての土台になる。『どの車と、どの車で迷っているか』を明確にすることだ」
「え、買う車は1台なのに? 『このミニバンが欲しい!』って行くじゃダメなの?」
「それが交渉においては一番不利な手だ。『この車しか考えていない』と伝えた瞬間、ディーラーは『値引きしなくても買ってくれる客』と判断し、値引きの原資(マージン)を温存してしまう」
「うわ、あぶな! 『めんどくさい』から、いきなり1店舗で決めようとしてたわ!」
「そうだ。だからこそ、例えば『トヨタのシエンタが本命』だとしても、必ず『ホンダのフリード』や『日産のセレナ(※車格は違うが比較対象として)』といった競合車種をピックアップする。そして、それらを扱っている販売店(ディーラー)もリストアップしておくんだ」
パパのうんちく:なぜ販売店もリストアップ?
「トヨタ」と一口に言っても、実は「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「ネッツ店」と、経営が異なる複数の販売チャネルがある(※現在は統合されつつあるが、経営母体が異なるケースは多い)。同じトヨタの車でも、経営が違うA店とB店を競わせる、という高度な戦術も存在する。まずは『複数の選択肢を持っている』という状況を作ることが重要なのだ。
② 相場とキャンペーンを事前に調査しておく
「ステップ2は、『敵(ディーラー)の手札』を知ることだ。つまり、値引きの相場と、今やっているキャンペーンを徹底的に調べる」
「相場って、さっきパパが言ってた『5%〜10%』ってやつ?」
「それは全体の大枠だ。もっと具体的に、『シエンタ 値引き 相場』『フリード 値引き 2025年』といったキーワードで検索するんだ。そうすると、ネット上には『今月、〇〇万円引きで契約しました!』といった、実際の購入者のレポート(口コミ)が溢れている」
「あ、そういうの見るの好き! 『オプション〇〇円サービスだった』とか書いてあるやつね」
「うむ。その『生きた情報』こそが、我々にとっての強力な武器になる。例えば『Aさんは25万円引きで買えた』という事実を知っていれば、ディーラーから『頑張って10万円引きです!』と言われても、『ああ、まだ余裕があるな』と冷静に判断できるだろう?」
「確かに! 知らないと『わーい10万円も安くなった!』ってハンコ押しちゃうところだわ」
「そうだ。キャンペーンも同様だ。『低金利ローン実施中』とか『純正ナビ半額』といった公式情報を把握しておけば、それを値引きとは“別枠”で要求できる可能性も出てくる。情報こそが、交渉における『余裕』を生むんだ」
③ まずは見積もり取得、条件はあえて曖昧に
「さあ、いよいよディーラー訪問だ。ステップ3は『見積もり取得』。だが、ここでの立ち振る舞いが最も重要だ」
「どうすればいいの? 『安くしてください!』って言っちゃダメなんだよね?」
「絶対にダメだ。この段階では、値引きの話は一切しないこと。あくまで『今日は情報収集で、いくつかのお店を回っているんです』というスタンスを貫く」
「へぇー! 値引き交渉なのに、値引きの話しないんだ」
「その通り。ここでは『いくらになるか』ではなく、『この客は本気で比較検討しているな』と営業マンに認識させることが目的だ。そして、見積もりをもらう際は、条件をあえて少し曖昧にするのがコツだ」
「曖昧に?」
「うむ。『オプションは、ナビとETCと…まあ、基本的なやつでお願いします』とか『色は白か黒で迷ってて』といった具合だ。最初からガチガチに条件を固めると、それ以上話が広がらなくなる。あえて『余地』を残しておくことで、後の交渉で『じゃあ、オプションをこっちに変えるから、もう少し…』とか『この色で決めるから…』といった“取引材料”として使えるんだ」
④ 値引き余地を残して“比較している”ことをほのめかす
「ステップ4。複数のディーラー(例えばA店、B店)で見積もりをもらったら、いよいよ『交渉』のフェーズだ。だが、ここでもストレートに『安くしろ』とは言わない」
「じゃあなんて言うのよ?」
「こう言うんだ。『A店さん(本命)の見積もり、すごく魅力的なんですが、実はB店さん(競合)は、これに加えて〇〇(オプション)も付けてくれるって話で…。すごく迷ってるんです』と」
「うわ、なんかヤラシイ感じ!」
「はは。だが、これが最も効果的だ。ポイントは『他社の名前を出して、比較している事実を“ほのめかす”』こと。営業マンは『あと一押しで契約してくれそうだが、他社に取られるかもしれない』という心理状態になる」
「なるほど。『じゃあウチも負けません!』ってなるわけね」
「その通り。ここで重要なのは、他社の見積書をベタッと見せるのではなく、『口頭でほのめかす』程度に留めることだ。実物を見せてしまうと、相手も『じゃあ、その他社より1万円だけ安くします』と、ギリギリのラインしか提示してこない。あえて情報を小出しにし、『相手はいくらまで出せるんだろう…』と営業マン側にも“値引き余地”を探らせるんだ」
⑤ 「今日決めるなら」の引き出しで最終勝負!
「そして、いよいよ最終ステップ5。ステップ4でライバル(競合)の存在をちらつかせ、営業マンから『これが限界です!』という条件を引き出した。だが、大抵の場合、まだ『本当の限界』ではない」
「えー、まだいけるの!? 貪欲ね!」
「ここが最後の『サルヂエ』だ。営業マンには、その場での決裁権(値引きできる上限)とは別に、『店長決裁』という奥の手が残されていることが多い。それを引き出す魔法の言葉が、『(奥さん/旦那さんと顔を見合わせながら)…うーん、この条件ならB店(競合)の方がいいかなあ…。あ、でも、もし、今日ここで決める(契約する)としたら、あとどれくらい頑張れますか?』だ」
「出た! 『今日決めるなら』!」
「うむ。ディーラーにとって『今日契約してくれる客』は、ノルマ達成のために何としても逃したくない“上客”だ。『今日決める』という“契約の意思”をこちらが提示することで、初めて相手は『ちょっと店長に相談してきます!』と、本当の奥の手(=店長決裁)を使いに走ってくれる。これが、論理的に値引きの限界を引き出す、最もスマートな鉄板フローだ」
「交渉がめんどくさい人」向け|最低限やるべき3つのこと
「パパー! さっきの『鉄板フロー5ステップ』、理屈はわかったわ。わかったんだけど…」
「なんだ、ママ。まだ何か納得いかない顔をしているな」
「やっぱり『めんどくさい』わよ! 5回もステップ踏むんでしょ? 見積もり何回ももらって、『ほのめかして』とか…私、そういう駆け引き、一番苦手!」
「ふむ…。ママのように、プロセス自体をストレスに感じるタイプもいるだろうな。だが、『交渉がめんどくさい』=『高く買ってもいい』ではないはずだ。そういう人のために、あの鉄板フローをさらに簡略化した、『最低限これだけやればOK』という3つのコツを伝授しよう」
「お! それよ、それ! それが聞きたかったの!」
言いにくいなら“紙で提示”でもOK
「まず、ママのように『安くして』とか『他社はいくらで』と口頭で駆け引きするのが苦手な人。これは、無理に喋る必要はない」
「え? 喋らないでどうやって交渉するのよ」
「『紙に書いて提示する』んだ。例えば、競合店でもらった見積書や、自分でネットで調べた『目標値引き額(相場)』をベースに、『予算はコミコミ〇〇万円です』とか『この金額になれば、今日決めます』と、こちらの希望を紙に書いて営業マンに見せる」
「えー、なんか失礼じゃない? それ」
「いや、むしろ合理的だ。口頭での『いくらまで行けますか?』『うーん…』という探り合いは、まさにママが苦手な『めんどくさい』時間だろう? 紙で提示すれば、こちらの『本気度』と『明確なゴール』が相手に一瞬で伝わる。営業マンも『この客はゴールがハッキリしているな』と判断し、余計な駆け引きなしに『できるか・できないか』の回答に集中してくれる。言った言わないのトラブルも防げるしな」
「なるほど…。『口ベタ』でも、『筆談』なら冷静に要求を伝えられるってわけね。それなら私にもできそう!」
一言だけ伝える「比較してから決めます」ルール
「次のコツは、余計な演技や駆け引きを一切しない、というルールだ。ママは『他社と迷ってるフリ』とか苦手だろう?」
「そうそう! バレバレになっちゃいそうだし、そもそも嘘つくみたいで嫌だわ」
「うむ。だから、嘘や演技は一切不要だ。ただ、『事実』だけを伝えればいい。ディーラーを訪問した一番最初に、営業マンにこう宣言するんだ。『今日は見積もりをいただきに来ました。車を買うときは、必ず何社か比較してから決めることにしているので』と」
「たったそれだけ?」
「そうだ。たったそれだけでいい。この一言を最初に伝えておくだけで、営業マンは『あ、このお客さんは今日いきなり契約することはないな』『他社と比較される前提で、良い条件を出さないと』と、自動的に考える」
「おー! 『安くして』って言わなくても、営業マンが勝手に『安くしなきゃ』って思ってくれるんだ!」
「その通りだ。こちらが『比較する』という合理的な購買行動を取ることを宣言するだけで、無駄な即決のプレッシャー(『今決めてくれたら…』)を回避できる。これも立派な交渉術だ」
無理な駆け引きをしない方が結果的に得な理由
「最後、3つ目のコツ。これは『交渉しない』というコツだが…。『無理な駆け引きはしない』ことだ」
「え? 値引きしてもらいに来たのに、駆け引きしないの?」
「そうだ。例えば、ネットの口コミで『30万円引き成功!』という情報があったとして、ディーRから『28万円が限界です!』と言われたとする。ここでママならどうする?」
「うーん、『あと2万円なんとかならないの!』って言っちゃうかも…」
「それが『短期的な損得』しか見ていない思考だ。車という商品は、買って終わり、ではない。むしろ、購入後の点検、車検、万が一の修理など、そのディーラー(営業マン)とはこれから何年も続く『長い付き合い』が始まる」
「あ…そっか」
「その最初の入り口で、たかが数千円、数万円のために無理やりゴネて、『面倒な客だ』という印象を与えてしまったらどうなる? その後のアフターサービスで、本来なら融通を利かせてくれたかもしれない『ちょっとしたサービス』をしてもらえなかったり、相談しにくい関係になったりするかもしれない」
「うわぁ、それは嫌だわ…。怪獣たちがいつ車内でジュースこぼすかヒヤヒヤしてるのに」
「だろう? 『値引き額』という目先の利益と、『良好な関係性』という長期的な利益。これを天秤にかける必要がある。営業マンも人間だ。『このお客さんには良くしてあげたい』と思わせた方が、結果的にトータルコスト(生涯で車にかかる費用)は安くなる可能性が高い。だから、ある程度のラインで『分かりました、〇〇さん(営業マン)を信頼して決めます』と“花を持たせる”のも、高度な『サルヂエ』なんだ」
「なるほどねぇ…。交渉って、ただ安くすれば勝ち、ってわけじゃないんだ」
「うむ。そもそも、こうした対面での『駆け引き』や『関係性づくり』自体がめんどくさい、という結論に至るなら、別の選択肢もある。最近では、ディーラーを回らなくても、ネットで複数の販売店の見積もりや在庫を一度に比較できるサービスも増えているからな。我々が今回見つけた『カー〇〇(※紹介するサービス名)』のようなサイト(※ここで`car-doc.biz`の機能を紹介するイメージ)を使えば、対面交渉のストレスなく、最初から有利な条件を探すこともできる。それも現代の合理的なやり方の一つだろう」
値引きしたくなる客ってどんな人?営業の心理を逆手に取る
「ねえパパ。さっき『営業マンも人間だ』って言ってたじゃない? 『この客には良くしてあげたい』って思わせた方が得って、なんか分かる気がする」
「ほう。ママが『心理』に興味を持つとは珍しいな」
「うるさいわね! でも、どうせ交渉するなら、相手に嫌な顔されるより『この人にはなんとかしてあげたい!』って思われた方が、私だって気分いいし、結果もついてきそうでしょ?」
「その通りだ。素晴らしい着眼点だな。では、今度は視点を変えて、『ディーラー(営業マン)が“値引きしたくなる客”』とはどんな客なのか、その心理を逆手に取る戦術を分析・解説しよう。これも立派な『サルヂエ』だ」
「決めてくれそうな客」は特典をつけたくなる
「まず、営業マンが最も重視していることはなんだと思う?」
「えーっと、『車を売る』こと?」
「正解だ。もっと言えば『契約してくれる(=決めてくれる)客』だ。彼らもボランティアではない。冷やかしの客に1時間説明するより、『本当に買ってくれそうな客』に10分集中したいのが本音だ」
「あー、それはそうか。こっちも買う気ない店でベタベタ接客されると、ちょっとめんどくさいもんね」
「うむ。だから、『鉄板フロー』でも解説したように、『今日は情報収集で』というスタンスから、『競合と比較している』『予算が合えば今日決める』と、段階的に『本気度』を上げていく客は、営業マンにとって『逃したくない上客』に見える。特に『今日決める』という最終カードは、『この客を逃したら、今月のノルマが…!』という彼らの心理を強く刺激する」
「なるほど。『買う気アピール』が大事なのね」
「そうだ。ただし、『買う買う詐欺』になってはいけない。『本気で検討している』という真摯な態度こそが、『この客のためなら、店長に掛け合ってでも特別な条件を引き出そう』という、彼らの“もうひと頑張り”を引き出す燃料になるんだ」
「知ってる感」よりも「余裕のある態度」が鍵
「じゃあさ、ネットで調べた知識をバーッと披露して、『私、知ってますよ』感を出すのはどうなの? 『この客は手強いぞ』って思わせて、値引きさせるとか」
「はは、ママがやりそうな手だが、それは逆効果になる可能性が高い」
「え、なんでよ!」
「考えてみろ。相手は毎日車を売っている『プロ』だ。そのプロに対して、付け焼き刃の知識(ネットで調べた情報)をひけらかす客を、彼らがどう思うか?」
「うわっ…『めんどくさい客が来た』って思うかも…」
「その通りだ。『知ってる感』を出す客は、営業マンからすると『プライドが高くて扱いにくい』『細かいことを指摘されそう』と警戒され、本音の(=本当に安い)見積もりが出てきにくくなる。むしろ、『この営業マンは信頼できるかな?』と値踏みされているようで、彼らのモチベーションを下げてしまう」
「じゃあ、どうすればいいのよ?」
「大事なのは『知識』をひけらかすことではなく、『余裕のある態度』を見せることだ。例えば、こんな感じだ」
- (NG)「このエンジンのスペックは〇〇ですよね? ネットだと燃費が悪いって書いてましたけど」
- (OK)「家族4人で長距離も乗るんですが、この車、実際のところ高速の走りとかってどうです? 〇〇さん(営業マン)のプロの意見を聞かせてほしいです」
「あ、なんかOKの方が感じいい! 『プロの意見』って言われると、相手も悪い気しないわね」
「うむ。『知らないから教えてほしい』という謙虚さと、『最終的な判断は自分(家族)でする』という“客としての余裕”。このバランスが取れた客は、営業マンも『しっかりサポートし甲斐がある』と感じ、良きアドバイザーとして本音で向き合ってくれる。結果として、値引き交渉もスムーズに進むものだ」
営業マンが“この人には本音を言いたくなる”瞬間とは?
「まとめると、営業マンが『この客には本音で話そう(=最大限の値引きを提示しよう)』と思うのは、彼らの『仕事のしやすさ』を尊重してくれる客だ」
「仕事のしやすさ?」
「そうだ。具体的には、以下のような客だ」
- 目的がハッキリしている:「今日は見積もりだけ」「比較検討している」「予算は〇〇円」など、要求が明確で分かりやすい。
- 決定権を持っている(ように見える):「私が決めます」あるいは「夫婦で来ているので今日結論が出せます」という状態。
- 相手(営業マン)を尊重している:「プロの意見が聞きたい」「〇〇さんの説明、分かりやすいですね」と、リスペクトを払う。
「うーん、なんか難しいわね…」
「難しく考える必要はない。要は、『お互いに気持ちよく取引したい』という意思表示だ。営業マンは『車を売る』プロであると同時に、『値引きの条件を引き出す』プロでもある。彼らを敵視して『いくらふんだくれるか』という戦いを挑むのではなく、『私たちの家族に最適な一台と、納得できる価格(ゴール)を、一緒に探してくれるパートナー』として接すること」
「パートナー、ねぇ」
「そうだ。営業マンが『この家族のために、いい買い物をしてもらいたい』と本気で思ってくれた瞬間、彼らは自ら『実は、今月のこのキャンペーンと、店長決裁を組み合わせれば…』と、我々(客)の側について『本音の(=一番安い)攻略法』を教えてくれる。それこそが、心理を逆手に取った、最強の交渉術なんだ」
交渉で失敗しないためのNG行動集
「ふぅ〜、なるほどねぇ。営業マンの心理、なんとなく分かってきたわ。こっちが『本気で悩んでる』って姿勢を見せつつ、相手を『パートナー』として尊重するのが大事なんでしょ」
「うむ。ママにしては的確な理解だ。その通り、値引き交渉は『戦い』ではなく『調整』だ。だが、世の中にはその『調整』の場で、知らずに“損”をしている人、つまりNG行動を取ってしまっているケースが非常に多い」
「え、そうなの? 例えば?」
「これから解説する3つのNG行動は、良かれと思ってやっている、あるいは無意識にやってしまっているが故に、ディーラーに『値引き交渉を断られた』り、本当の最大値引きを引き出せずに終わってしまったりする典型的な失敗パターンだ。我々サルヂFミリーの体当たり企画としては、この『失敗』からも学ばねばならん」
他社の名前を出して牽制するのは逆効果?
「まず、一番やりがちなのがこれだ。ママ、競合店の見積もりを手に入れたらどうする?」
「そりゃあ、本命のお店に行って『見てください! B店さんはこんなに安かったですよ! A店さんはこれより安くできます!?』って、バサッと見せるわよ! これが一番効くんじゃないの?」
「はは、ママ。それが典型的なNG行動の一つだ」
「えー! なんでよ! 『比較してる』って事実を突きつけるのが大事なんじゃなかった?」
「『比較していると“ほのめかす”』のはOKだ。だが、『他社の見積書をそのまま見せて“牽制”する』のは、実は悪手なんだ」
「どうして?」
「理由は2つある。1つは、営業マンの心理だ。他社の見積もりを突きつけられると、彼らは『ああ、この客は価格でしか見ていないな』と感じ、『この客のために頑張ろう』というモチベーションが下がる。むしろ『ウチも商売ですから』と、事務的な対応に切り替わってしまう」
「うわ、感じ悪い…」
「2つ目の理由はもっと実利的だ。仮にB店の値引きが20万円だったとして、その見積書をA店に見せたら、A店の営業マンはどう対応すると思う?」
「うーん、『じゃあウチは21万円引きで!』とか?」
「その通り! まさに『B店よりちょっとだけ上乗せした金額』で話を終わらせようとする。だが、もしA店が本来『30万円』の値引き余地(原資)を持っていたとしたら? 我々は、見積書を見せたが故に『9万円』も損をすることになる」
「そ、そっか…! こっちの手の内(=競合の価格)を全部見せちゃうと、相手はそれ以上の『本当の限界』を見せてくれなくなるんだ!」
「うむ。だから、見積書は見せず、『B店さんは、オプションも付けてくれて、かなり良い条件だったんですよね…』と口頭で“ほのめかし”、相手に『B店はいくら提示したんだ…?』と“想像させる”方が、結果的に良い条件を引き出しやすいんだ」
無理な即決要求はかえって損する可能性も
「次のNG行動は、『即決』というカードの切り方を間違えることだ」
「あれ? 『今日決めるなら』って言うのは、最終ステップの“奥の手”じゃなかった?」
「その通り。あくまで『最終ステップ』で使うから奥の手なんだ。だが、交渉が苦手だったり、せっかちだったりする人は、ディーラーに訪問して開口一番、こう言ってしまう」
「なんて?」
「『今日決めるから、いきなり限界の値引き額を教えてください』と」
「あ…やりそう、私。だって『めんどくさい』もん、駆け引き。最初から一番安くしてくれればいいのに」
「気持ちは分かるが、それはディーラー側からすれば『信頼関係ゼロ』の客だ。まだ車(商品)の説明もろくにしていない、オプションも決まっていない、こちらの本気度も伝わっていない段階で、いきなり『金(値引き)の話』だけをされたら、営業マンはどう思う?」
「『なんか変な客が来たな』って思うかも…」
「まさにそうだ。『冷やかしだろう』『どうせ他店でも同じことを言っているんだろう』と判断され、本気の(=店長決裁が必要な)値引き額など絶対に出てこない。せいぜい『今ですと、このくらいですね…』と、誰にでも提示するような“表面的な値引き額”を提示されて終わりだ」
「じゃあ、本当はもっと安くできるのに、それ以上交渉の余地がなくなっちゃうんだ」
「その通り。『今日決める』という最強のカードは、お互いに見積もりを出し合い、オプションを詰め、競合とも比較し、『あとはもう“価格”だけ』という土壇場で切るからこそ、『そこまで本気なら…!』と相手の『店長決裁』を引き出せる。使うタイミングを間違えると、何の効力も持たないゴミカードになってしまうんだ」
タイミングと余裕のあるスタンスがカギ
「最後のNG行動は、実は『行動しない』ことだ」
「え? どういうこと?」
「それは、『比較検討(相見積もり)』を途中で諦めてしまうことだ。特に、最初に行ったディーラーの営業マンがすごく感じが良くて、『ママさんのために、僕、精一杯頑張りました! これが限界です!』なんて言われたらどうする?」
「うわー、そのシチュエーション弱い! 『あ、はい、じゃあそれで…』ってハンコ押しちゃいそう…」
「それが一番の『失敗』だ。その営業マンは本当に頑張ってくれたのかもしれない。だが、『比較対象』がなければ、その『頑張り(値引き額)』が本当に妥当なのか、我々には判断できない」
「そっか…『良い人』だったとしても、『安い』とは限らないんだ」
「うむ。また、『タイミング』も重要だ。我々が訪問した日が『月初』で、ディーラーがまだノルマに追われていない時期だったら? 当然、値引きは渋くなる。逆に、『月末』や『決算期(3月、9月)』という『売らなければならない』タイミングで交渉すれば、同じ営業マンでも全く違う条件(値引き額)が出てくる可能性がある」
「うわー、車買うのって奥が深い…」
「そうだ。NG行動をまとめると、『焦って手札を全部見せる』『タイミングを無視して即決を迫る』『比較を怠る』こと。結局、H2-2で解説した『鉄板フロー』を地道にこなし、『余裕のあるスタンス』で臨むことが、一見遠回りに見えて、実は最大の値引きを勝ち取る唯一の方法(成功パターン)なんだ」
まとめ|鉄板フローで交渉に臨めば、誰でも自然に値引きできる
「いやー、パパ! 今回の『サルヂエ』、勉強になったわ。最初は『値引き交渉なんてめんどくさい!』としか思ってなかったけど、ちゃんと理屈と流れがあるのね」
「ふむ。ママがそうやって『構造』を理解しようとすること自体が、大きな進歩だな。今回の検証をまとめてみよう」
「段取り8割」で交渉はほぼ決まる
「結局のところ、新車の値引き交渉は、ディーラーの店内で『戦う』ものではない、ということだ」
「え? そうなの? あれだけ『最終ステップ』とか言ってたじゃない」
「思い出してほしい。『鉄板フロー5ステップ』のうち、ディーラー訪問前の準備がいくつあった?」
「あ…『①競合リストアップ』と『②相場調査』。2つか」
「そうだ。そして、訪問後も『③見積もり取得(ここでは交渉しない)』『④ほのめかす』『⑤最終勝負』と続く。つまり、交渉の成否は、いかに事前に『手札(=情報)』を揃え、『比較する』というスタンスを準備(=段取り)できるかで、8割方決まっているんだ」
「なるほどー。準備ナシでいきなりお店に行って『安くして!』って言うのは、丸腰で戦場に行くようなものだったのね」
「その通りだ。『どの車種と迷っているか』『相場はいくらか』『どのタイミング(時期)で買うか』。これらの“段取り”さえしっかりしていれば、ママのような『口ベタ』や『交渉が苦手』な人でも、ディーラーは『この客は分かっているな』と判断し、自然と良い条件(値引き)を提示せざるを得なくなるんだ」
無理なくスマートに値引きを引き出す方法
「それに、H2-3でも検証したが、『交渉がめんどくさい』なら、無理に『鉄板フロー』を完璧にこなす必要もない」
「うんうん。『紙で提示する』とか、『“比較する”って宣言するだけ』とか、アレは気が楽になったわ」
「うむ。大事なのは、『我々は合理的な判断をする消費者である』という姿勢を崩さないことだ。感情的に『安くしろ!』とゴネるのではなく、『他社とも比較した上で、条件が合えば(=納得できれば)買います』という“余裕のある態度”を示すこと。これこそが、令和の時代における、最もスマートな交渉術だ」
「『余裕』ねぇ…。パパのうんちくで、私も少しは『余裕』を持てるようになったかしら」
「だと良いがな。H2-4の心理戦術やH2-5のNG行動を反面教師にすれば、少なくとも『知らずに損をする』ことは避けられるはずだ」
あなたの交渉力、実はもう“足りている”かも?
「今回の『サルヂエ』レポート、どうだったかな、ママ」
「うん、すごく納得した! 要は、『ちゃんと準備して』『相手(営業マン)を尊重しつつ』『冷静に比較する』ってことでしょ? なんだか、車選びだけじゃなくて、ウチの家計節約とか、他の買い物にも通じる話だった気がするわ」
「ほう! それに気づいたか。まさにその通りだ。『新車の値引き交渉』と聞くと、何か特別な『スキル』や『話術』が必要だと思いがちだ」
「そうそう、思ってた!」
「だが、本質は『情報収集』と『比較検討』だ。それは、普段ママがスーパーのチラシを見比べて、一番安い卵を買いに行っている行為と、構造的には何も変わらない」
「え、あんなにめんどくさいと思ってた値引き交渉が、卵の特売と同じ!?」
「規模が違うだけで、本質は同じだ。だから、この記事をここまで読んだあなたは、値引き交渉に必要な『サルヂエ(=知恵)』は、もう十分足りている。あとは、この鉄板フローに沿って、自信を持って『比較検討』という“段取り”を実行するだけだ」
「よし! パパ、なんだか私、あの怪獣たちのために、最強のミニバンをスマートに値引きできる気がしてきたわ!」
「うむ。その意気だ。我々サルヂエファミリーの『車買い替え』企画、ぜひ成功させようじゃないか!」

