「ねえ、実家の車庫にずっと置いてあるおじいちゃんの車、あれどうするの? もう車検切れてるんでしょ?」
ある日の夕食後、ママの一言から我が家の「車検切れ車対策会議」が始まりました。
確かに、最後に乗ったのは半年以上前。エンジンがかかるかも怪しいし、車検が切れた車なんて、そもそも売れるのかどうかも分からない。廃車にするにしてもお金がかかりそうだし……と、つい後回しにしていたのが本音です。
「動かないし、やっぱり廃車費用を払って処分するしかないのかな……」と弱気になる僕に対し、「えー! もったいない! 売れるかもしれないじゃん。パパ、得意のリサーチお願い!」とママからの指令。
そこで徹底的に調べてみると、「車検切れの車でも売れる」どころか、「思わぬ値段がつくこともある」という事実が判明しました。ただし、売り方や業者選びを間違えると、レッカー代で赤字になったり、法律違反のリスクを負ったりすることも。
この記事では、僕たちサルヂエファミリーが実際に調べた「車検切れ車の買取事情」について、初めての人でも損をしないための基礎知識をシェアします。
- 車検切れの車がなぜ売れるのか?
- 買取相場はどう決まるのか?
- 絶対にやってはいけないNG行動とは?
「どうしよう?」と迷っている間に、車の価値はどんどん下がってしまいます。まずは正しい知識を持って、賢く手放す方法を見ていきましょう。
車検切れの車は売れるのか?
結論から言うと、車検が切れていても車は問題なく売れます。
むしろ、中古車買取市場において「車検切れ」はそれほど珍しい状態ではありません。
僕も最初は「公道を走れない車なんて、誰が欲しがるんだ?」と疑問でした。しかし、買取業者の視点に立って構造を分解してみると、ちゃんとした理由があるんです。
実は需要あり!車検切れ車が売れる3つの理由
業者が車検切れの車を買い取る主な理由は、大きく分けて以下の3つです。
- 自社工場で安く車検を通せるから
一般ユーザーが車検を通そうとすると、整備費用や手数料で十数万円かかりますよね。でも、自社で整備工場を持っている買取業者なら、原価に近いコストで車検を通し、再び中古車として販売できます。つまり、彼らにとって「車検切れ」は致命的な欠陥ではないのです。 - 海外への輸出需要があるから
日本車は耐久性が高く、海外では絶大な人気があります。たとえ日本国内では古くて売れないような車でも、海外に行けば「まだまだ現役」として高値で取引されることが多いです。この場合、日本の車検制度は関係ありません。 - 部品(パーツ)としての価値があるから
もし車自体が動かなくても、エンジン、ドア、バンパーなどのパーツ単位で見れば価値があります。事故修理用などで中古パーツの需要は常にあり、リサイクル資源として鉄やアルミの価値もつきます。
「なるほどね。日本で乗れないからゴミ、っていうのは私たちの思い込みだったわけだ」とママも納得の様子。
「廃車」とお金の関係
ここで多くの人が勘違いしやすいのが、「廃車」の定義です。
一般的に「廃車」というと「スクラップ工場で解体すること」をイメージしがちですが、行政上の手続きとしては「登録を抹消すること」を指します。
ディーラーなどに廃車手続きを丸投げすると、代行手数料や処分費用(リサイクル料など)で数万円請求されるケースがあります。しかし、買取業者に依頼すれば、これらの手続きを無料で代行してくれた上で、さらに車両本体価格(または金属資源としての価格)を支払ってくれることが多いのです。
つまり、「お金を払って処分する」のではなく、「お金をもらって引き取ってもらう」のが正解。この視点の切り替えが、最初の重要なステップです。
車検切れ車の買取相場と価格が決まる仕組み
「売れるのは分かったけど、じゃあ一体いくらになるの? 車検が残ってる車よりだいぶ安くなるんでしょ?」
ママの鋭いツッコミが入りました。ごもっともです。
当然ですが、車検がたっぷり残っている車に比べれば、査定額は下がります。では、その「差額」はどのように計算されるのでしょうか。
一般的な相場の考え方
中古車の査定額は、基本的に以下の式で成り立っています。
査定額 = (車両本体の市場価値 + 車検残存期間の価値) - 整備・販売コスト - 業者の利益
車検切れの場合、単純に「車検残存期間の価値」がゼロになります。さらに、業者が再販売するために新たに車検を取得するコスト(自賠責保険料、重量税、整備費など)がかかるため、その分がマイナス査定として響いてくるわけです。
車検「あり」と「なし」で査定額はどれくらい変わる?
具体的にどれくらい安くなるかというと、「車検にかかる法定費用+α」分が引かれると考えるのが妥当です。
軽自動車なら数万円〜5万円程度、普通車なら7〜10万円程度、査定額が低くなる傾向があります。
ここでパパとして注意したいのは、「じゃあ自分で車検を通してから売った方が得なんじゃない?」という点。
計算してみると分かりますが、これはほとんどの場合、損をします。
- 自分で車検を通す場合: 費用が満額(10〜15万円など)かかる。
- 査定額アップ分: 車検満タンになっても、プラス査定は数万円程度。
業者は安く車検を通せるノウハウを持っているので、個人が高い費用をかけて車検を通しても、その元を取れるほど査定額は上がりません。「車検切れのまま売る」のが、経済合理的にも正解なのです。
車種・年式・走行距離による違い
もちろん、ベースとなる「車両本体の価値」は車種や状態によって大きく異なります。
- 人気車種・SUV・ミニバン: 需要が高いため、車検切れでも高額査定が出やすい。
- 低年式(古い)・過走行: 国内再販が難しい場合でも、前述の「輸出」や「部品取り」のルートを持つ業者なら値段をつけてくれる。
- 不動車(エンジンがかからない): 買取価格は下がるが、鉄くず(スクラップ)相場としての最低保証額(0円〜数万円)がつくことが多い。
「うちの車、バッテリー上がってるけど大丈夫かな?」とママが心配していましたが、査定員がブースターケーブルを持ってきてくれるので、その点は心配無用。
大事なのは、「どうせ値段がつかない」と決めつけず、複数の可能性を探ることです。
車検切れ車を高く売るコツ3選
車検が切れているというハンデを乗り越え、少しでも高く売るためには戦略が必要です。我が家でも実践した、誰でもできる3つのコツを紹介します。
1. 1日でも早く売る(時間は最大の敵)
「もう少し様子を見てから…」と考えているなら、それが一番の悪手です。中古車の価値は、時間が経てば経つほど下がっていくのが基本原則。特に車検切れの車は放置すればするほど、バッテリー上がりやタイヤの劣化、エンジンの不調など、コンディションが悪化していきます。
また、自動車税の観点からもスピードは重要です。自動車税は4月1日時点の所有者に課税されますが、年度の途中で売却(抹消登録)すれば、残りの期間分の税金が還付される場合があります(軽自動車を除く)。
「来月やろう」と先延ばしにしている間に、戻ってくるはずのお金が減ってしまうのは非常にもったいない話ですよね。
2. 複数の業者で比較する
これは車検の有無に関わらず鉄則ですが、必ず複数の買取業者に査定を依頼することです。
特に車検切れ車の場合、業者によって得意・不得意がはっきり分かれます。
- A社(一般的な中古車店): 「車検切れだと再販コストがかかるから、査定額は5万円ですね」
- B社(海外輸出に強い店): 「この車種はアフリカで人気だから、車検切れでも15万円出しますよ!」
- C社(廃車・部品取り専門): 「ボディのキズが多いけど、パーツとして価値があるから8万円で」
このように、同じ車でも販路によって査定額に数倍の差が出ることがザラにあります。1社だけで決めてしまうのは、みすみす損をしているようなもの。
ママも「スーパーのチラシを見比べるのと同じだね。面倒くさがっちゃダメってことか」と納得の表情でした。
3. 出張買取・引き取り「無料」の業者を選ぶ
車検切れ車ならではの絶対条件がこれです。
後述しますが、車検切れの車は公道を走れません。つまり、店舗まで持ち込むにはレッカー車が必要です。
もし「査定額は高いけど、レッカー代は実費(2〜3万円)いただきます」という業者を選んでしまったら、手元に残るお金は激減してしまいます。
契約前に必ず「車検切れ車なのですが、出張査定や引き取りのレッカー代は無料ですか?」と確認しましょう。多くの大手買取店や廃車専門店では、これらを無料サービスとして提供しています。
絶対にやってはいけない!車検切れ車を売る際の注意点
ここからは少し怖い話ですが、絶対に知っておいてほしい「法律」と「リスク」の話です。パパとして、ここだけは譲れません。
【最重要】公道を自走するのは絶対NG
「お店までちょっとの距離だし、バレないでしょ」
そんな軽い気持ちで車検切れ(&自賠責保険切れ)の車を運転することは、絶対にやめてください。これは重大な法律違反です。
- 無車検運行(車検切れ): 違反点数6点(即・免許停止)、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 無保険運行(自賠責切れ): 違反点数6点、1年以下の懲役または50万円以下の罰金
これらがセットになると、一発で免許取り消しレベルの処分に加え、数十万円の罰金が科せられる可能性があります。もちろん、その状態で事故を起こせば人生が変わりかねません。
「移動させたいときはどうするの?」という疑問への答えは、「迷わず積載車(レッカー)を手配する」の一択です。
仮ナンバーならいいの?
役所で「仮ナンバー(臨時運行許可番号標)」を借りれば、車検切れの車でも一時的に公道を走ることは可能です。
しかし、これを買取のために利用するのはおすすめしません。
- 手間がかかる: 平日に役所へ行き、申請手続きをして、借りた後にまた返却に行かなければなりません。
- 費用がかかる: 自賠責保険(短期)への加入(数千円)と手数料が必要です。
- リスクがある: 慣れない仮ナンバーでの運転中に故障や事故のリスクがあります。
出張買取に来てもらえば、これらの手間も費用もリスクもゼロです。あえて仮ナンバーを取得してまで持ち込むメリットは、ほぼありません。
不要な費用を請求されるケースに注意
一部の業者では、契約後に「車検切れ車の引取手数料」や「書類作成代行費用」といった名目で、あとから費用を請求してくるトラブルも耳にします。
- 契約書をよく読む: 「引取費用」「廃車手続き代行費用」が無料になっているか、金額が明記されているかを確認する。
- 還付金の扱いを確認する: 自動車税や重量税の還付金が査定額に含まれているのか、別途返金されるのかを確認する。
「全部お任せします」と言う前に、「私が払うお金は本当に0円ですか?」「還付金はどうなりますか?」としっかり質問できるかどうかが、理屈派パパの腕の見せ所です。
車検切れ車を売る際の簡単ステップ
「よし、売ることは決めたけど、手続きが難しそう……」とママが不安げな顔。
でも大丈夫。車検切れだからといって、特別な手続きが山のように増えるわけではありません。基本的な流れは普通の車売却と同じです。ここでは、最もスムーズな「出張買取」を利用した際の流れを整理しました。
査定から売却までの流れ
- 事前準備(情報整理)
まずは車検証を手元に用意し、車種、年式、走行距離を確認。「車検が切れている」ことと「自走できない」ことを伝えられるようにしておきます。 - 申し込み(複数社へ)
一括査定サイトや廃車買取業者へWebまたは電話で申し込み。「車検切れですが買取可能ですか?」と一言添えるとスムーズです。 - 出張査定(実車確認)
査定員が自宅(または車の保管場所)まで来てくれます。エンジンがかかるか、キズの状態などをチェックします。立ち会いは必要ですが、30分〜1時間程度で終わります。 - 契約・必要書類の引き渡し
査定額に納得したら売買契約を結びます。後日、必要書類を郵送または手渡しします。 - 車両の引き上げ
業者が積載車(レッカー)を手配し、車を引き取っていきます。ここでようやく駐車スペースが空きます! - 入金確認・手続き完了通知
指定口座への入金を確認。後日、名義変更や抹消登録が完了したことの証明(コピーなど)が送られてくれば完了です。
最低限必要な書類一覧
車検切れ車を売る際に必要な書類は、基本的に以下の通りです。「どこにしまったっけ?」と慌てないよう、早めに探しておきましょう。
- 車検証(自動車検査証)
※紛失している場合は、運輸支局で再発行が必要ですが、買取店が代行してくれる場合もあります。 - 自賠責保険証
※期限が切れていても、原本が必要な場合があります。 - 自動車税納税証明書
※最新年度分。未納がある場合は、売却代金から差し引かれるなどの相談が必要です。 - 印鑑登録証明書
※発行から3ヶ月以内のもの。普通車の場合に必要(軽自動車は不要)。 - 実印
※譲渡証明書や委任状への捺印に使用(軽自動車は認印でOK)。 - 身分証明書
※免許証など。
「もし書類をなくしてても、正直に相談すればなんとかなることが多いよ」とパパからの補足。業者はプロなので、書類不備の対処法も熟知しています。まずは相談あるのみです。
まとめ:車検切れでもあきらめない!正しく知れば売却は難しくない
「まさか、あんなに悩んでた車が電話一本で片付くなんてね」
後日、無事に車が引き取られ、ガランとした実家の車庫を見てママが呟きました。
車検切れの車は「負の遺産」だと思われがちですが、正しい知識と手順さえ踏めば、しっかりとした「資産」に変わります。
今回のポイントをおさらい
- 車検切れでも売れる: 輸出や部品取りの需要があり、廃車費用どころかプラスになる可能性が高い。
- 絶対に自走しない: 免許取り消しなどのリスクを冒さず、無料の出張査定・引き取りを利用する。
- スピードが命: 放置すればするほど価値は下がる。悩む前に査定額を知ることが第一歩。
もっとも損をするのは、「面倒だから」と放置して、価値をゼロ(あるいはマイナス)にしてしまうことです。
まずは、自分の車にどれくらいの価値が残っているのか、無料査定で確かめてみることから始めてみてください。意外なお小遣いになって、家族で美味しいご飯が食べられるかもしれませんよ。