(サラサラ… ※ブログ執筆中)
(ママ)「ねえ、あなた。ちょっと聞きたいんだけど」
(パパ)「ん?どうしたママ、今ちょうどブログのネタを考えているところなんだが」
(ママ)「車検のたびにさ、整備の人から『ブレーキオイル交換しますか?』って聞かれるじゃない?あれって、本当に毎回やった方がいいの?なんか、よくわからないまま『じゃあ、お願いします』って言っちゃってるんだけど」
(パパ)「(カチャッ ※メガネを上げる音)ママ、それを言っちゃおしまいだよ!まず、世間一般では"ブレーキオイル"って呼ばれることも多いが、正確には『ブレーキフルード(Brake Fluid)』。Fluid、つまり液体だ。そして、あれは車の"止まる"という機能において、人間の心臓から送られる血液と同じくらい重要な役割を担っているんだ!」
(ママ)「うわっ、出たわね理屈っぽいの。要するに大事ってことでしょ?でも、なんで交換が必要なのよ。エンジンオイルと違って、あんまり減るイメージないじゃない」
(パパ)「フフフ。いい質問だ、ママ。そこが今回のキモなんだよ。ブレーキフルードは、エンジンオイルみたいに『燃えたり』『極端に減ったり』はしにくい。だからこそ、交換の必要性が分かりにくいんだ」
(ママ)「じゃあ、なんで?」
(パパ)「減るから交換するんじゃない、"劣化"するから交換するんだよ」
(ママ)「劣化?」
(パパ)「そう!というわけで、今回のサルヂエ家の"なんでも自分達で調べてみる"企画は、『ブレーキフルードの交換時期はいつが正解か?』。その交換しないとどうなるかのナゾと、交換時期の目安を、この僕が徹底的に調べてみたぞ!怪獣たち(息子たち)を乗せて走るんだから、安全第一だからな!」
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そもそもブレーキフルードって何?役割と種類
(パパ)「さて、ママ。ブレーキフルードの交換時期を語る前に、まずは『ブレーキフルードとは何ぞや?』という基本の"キ"からだ。ここを理解しないと、なぜ交換が必要なのかが腑に落ちないからな。うんちくタイム、スタートだ!」
(ママ)「はいはい、お手柔らかにお願いしますよ…」
ブレーキが効く仕組みとフルードの役割
(パパ)「いいか?僕らがブレーキペダルを踏む力は、実はそんなに強くない。あの小さな足の力だけで、1トン以上ある鉄の塊(くるま)を、高速走行中からピタッと止めるなんて、本来は無理なんだ」
(ママ)「確かに。あんな軽く踏んでるだけだもんね。特に最近の車は」
(パパ)「そこで登場するのが『油圧』の力と、その力を伝える『ブレーキフルード』だ。ブレーキペダルを踏むと、その力が『マスターシリンダー』っていう装置で強い圧力に変換される。その圧力を、ブレーキフルードっていう液体が細いパイプを通って、四輪のブレーキ装置(ブレーキキャリパー)に『えいやっ!』と伝達するんだ」
(ママ)「ふんふん。つまり、ペダルを踏んだ力を、タイヤのブレーキ本体に伝える『伝言役』みたいなもの?」
(パパ)「その通り!しかも、液体は『密閉された空間なら、どこでも均等に圧力がかかる』(パスカルの原理っていうんだが…まぁこれは忘れていい)という性質がある。だから、4つのタイヤにほぼ均等にブレーキをかけられるんだ」
サルヂエ家のポイント
ブレーキフルードは、ペダル踏力を「油圧」に変えて、各タイヤのブレーキ装置に伝える「力の伝達役」。これが無いと、いくらペダルを踏んでもスカスカで車は止まらない、まさに命綱なのだ。
DOT3/DOT4など種類の違いと特徴
(パパ)「そして、このブレーキフルード、実は種類がある。ガソリンにレギュラーとハイオクがあるみたいなもんだと思えばいい」
(ママ)「え、そうなの?なんでもいいわけじゃないんだ」
(パパ)「そうだ。一般的には『DOT(ドット)』っていうアメリカの運輸省が定めた規格が使われている。主に『DOT3』『DOT4』『DOT5.1』がある。(※DOT5というのもあるが、これは主成分が全く別物だから、今は覚えなくていい)」
(パパ)「この数字が違うと、何が違うか。それは主に『沸点』だ」
(ママ)「沸点?お湯が沸くあの沸点?」
(パパ)「そう!ブレーキっていうのは、タイヤと一緒に回る円盤(ブレーキローター)をパッドでギュッと挟んで、その摩擦で車を止めるだろ?その時、ものすごい熱(摩擦熱)が発生する。その熱がフルードに伝わって、もしフルードが沸騰(沸騰)して気泡(エア)が発生したら…どうなると思う?」
(ママ)「え?どうなるの?シュワシュワするだけじゃなくて?」
(パパ)「さっき『液体は圧力を伝える』と言っただろ?でも『気体(エア)』は、圧力をかけても『フニャッ』と縮むだけで、力を伝達できないんだ。つまり、ブレーキペダルを踏んでもスポンジを踏んでるみたいにフニャフニャになって、ブレーキが効かなくなる!これが超危険な『ベーパーロック現象』だ」
(ママ)「こわっ!考えただけでもゾッとするわね…」
(パパ)「だから、ブレーキフルードには高い沸点が求められる。だが、やっかいなことに、ブレーキフルードの主成分(グリコール系)は、空気中の水分を吸ってしまう『吸湿性』があるんだ」
(ママ)「え、勝手に水吸っちゃうの?」
(パパ)「そう。水分を含むと、どんどん沸点が下がってしまう。新品(ドライ沸点)は高くても、水分を含んだ状態(ウェット沸点)だと性能がガタ落ちする。だから、DOT規格では、この2つの沸点が厳しく決められているんだ」
ここで、主なDOT規格の違いをまとめてみよう。
| 規格 | 主成分 | ドライ沸点 (新品時目安) | ウェット沸点 (水分を含んだ時) | 主な用途・特徴 |
|---|---|---|---|---|
| DOT3 | グリコール系 | 205℃以上 | 140℃以上 | 日本の一般的な乗用車に広く採用されている。価格も比較的安価。 |
| DOT4 | グリコール系 | 230℃以上 | 155℃以上 | DOT3より沸点が高い。欧州車やスポーツ走行を想定した車に多い。 |
| DOT5.1 | グリコール系 | 260℃以上 | 180℃以上 | さらに高性能。寒冷地での性能も考慮されているが、吸湿性が高く寿命が短い傾向も。 |
| (DOT5) | シリコン系 | 260℃以上 | 180℃以上 | (※主成分が別物。吸湿しないが、特殊な車両用で、絶対に混ぜてはいけない) |
(パパ)「見ての通り、DOT4やDOT5.1の方が高性能(沸点が高い)だが、その分、吸湿性が高くて寿命が短い(=こまめな交換が必要)傾向もある。自分の車にどの規格が指定されているかは、ブレーキフルードのタンクのフタ(リザーバータンクキャップ)や、車の取扱説明書で必ず確認が必要だ」
交換時に注意すべき規格・混ぜる危険性
(ママ)「じゃあ、よくわからないなら、とりあえず一番高性能なDOT5.1とかにしておけば安心なんじゃない?」
(パパ)「それがそう単純でもない。まず、車のメーカーが指定した規格(例:DOT3指定)を守るのが大前提だ。DOT3指定の車に、沸点がより高いDOT4を入れるのは(基本的には)上位互換だから大丈夫と言われることもあるが、逆(DOT4指定の車にDOT3)は性能不足で絶対にダメだ」
(パパ)「そして、一番やっちゃいけないのが『混ぜる』こと。特に、さっき(表)でカッコ書きにした『DOT5(シリコン系)』と、それ以外の『グリコール系(DOT3, 4, 5.1)』は、水と油みたいなもので、絶対に混ぜちゃいけない。ブレーキシステム全体をダメにするぞ!」
(ママ)「うわぁ…ややこしい。じゃあ、DOT3とDOT4みたいに同じグリコール系なら混ぜてもいいの?」
(パパ)「うーん、緊急時(フルードが漏れて減った時など)ならともかく、交換時に積極的に混ぜるのには推奨されないな。なぜなら、性能が低い方(DOT3)のレベルに落ちてしまうからだ。せっかく高い沸点のDOT4を入れても、DOT3が混zったら意味がないだろ?交換する時は、古いフルードをできるだけ全部抜いて、新しい規格のものを全量入れ替えるのが鉄則だ」
(ママ)「なるほどね…。ブレーキフルードって、ただのオイルじゃなくて、ちゃんと考えられた『液体部品』なんだね」
(パパ)「その通り!理解が早くて助かるよ、ママ」
交換時期の目安|車種・走行状況によって違う?
(ママ)「そうそう、それが聞きたかったのよ。DOT規格とかで性能が違うのはわかったけど、結局、ブレーキフルードの交換時期って、いつが正解なの?」
(パパ)「よし来た。多くの人が疑問に思うポイントだな。まずは、整備工場やカー用品店でよく言われる『一般的な目安』から説明しよう」
一般的な目安は「2年または2万km」
(パパ)「結論から言うと、一般的な交換目安は『2年ごと』または『走行距離2万kmごと』の、どちらか早い方だ」
(ママ)「2年ごと?…あ、だから車検(新車じゃなければ2年ごと)のタイミングで『交換しますか?』って聞かれるわけね!」
(パパ)「その通り。整備する側からしても、車検のタイミングで他の点検と一緒にやるのが一番効率的だし、オーナーにとっても覚えやすい。だから『車検ごと=2年ごと』が定着しているんだ」
(ママ)「なーんだ。じゃあ、やっぱり車検のときに言われるがまま交換しておけば、それで安心ってことじゃない」
(パパ)「(人差し指を立てて)チッチッチッ。ママ、そう結論づけるのはまだ早い。それはあくまで『一般的な目安』に過ぎない。さっき言った『ブレーキフルードは水分を吸う』という性質を思い出してくれ」
(ママ)「え?あぁ、吸湿性だっけ」
(パパ)「そう。フルードは密閉されているとはいえ、リザーバータンクのキャップ(フタ)にある空気穴や、ブレーキホースのゴム部品などを通じて、少しずつ空気中の水分を吸ってしまう。使っていなくても、時間が経つだけで劣化(=沸点が下がる)が進むんだ。だから、あまり乗らない人でも『2年』という期間の目安があるんだよ」
(ママ)「なるほど。乗らなくても劣化はする、と」
街乗り vs 高速・山道で劣化のスピードが違う
(パパ)「その上で、だ。この『2年または2万km』という目安は、乗り方(走行状況)によって、大きく変わってくるんだ」
(ママ)「乗り方?」
(パパ)「例えば、僕たちみたいに、子供の送り迎えや近所のスーパーへの買い物がメインの『ちょい乗り(街乗り)』が多い場合を考えてみよう」
(ママ)「うんうん。うちのパターンね」
(パパ)「街乗りは、信号や交差点で『ストップ&ゴー』を繰り返すだろ?つまり、ブレーキを踏む回数が非常に多い。ブレーキを踏むたびに摩擦熱が発生するから、フルードへの熱的ダメージ(=劣化)は蓄積しやすい。さらに、走行距離が伸びないからエンジンルームが十分に温まらず、逆に湿気が溜まりやすいなんて説もある」
(ママ)「え、じゃあ街乗りメインだと、目安より早く交換した方がいいの?」
(パパ)「そういう考え方もある。逆に、毎日高速道路で長距離通勤している人はどうだ?ブレーキを踏む回数は少ないが、一度踏むと高速からの強い制動力が必要だ。そして、何より一番シビアなのが『山道』や『峠道』での下り坂だ」
(ママ)「あー、旅行とかで行くと、ずっとブレーキ踏みっぱなしになっちゃうところね」
(パパ)「そう!長い下り坂でフットブレーキを多用すると、ブレーキはとんでもない高温になる。それこそ、さっき話した『ベーパーロック現象』が起きやすい、最も危険なシチュエーションだ。こういうハードな使い方をする人は、『2年』なんて待たずに、もっと短いサイクル(例えば1年ごと)で交換した方が当然、安全マージンは高い」
サルヂエ家の考察
- 街乗り(ちょい乗り)が多い人:ブレーキ回数が多く、フルードへの熱負荷は意外と大きい。
- 高速道路が多い人:ブレーキ回数は少ないが、速度域が高い分、一度の負荷は大きい。
- 山道・坂道が多い人:最もシビアな状況。ブレーキの過熱リスクが非常に高い。
→ 結論:「2年ごと」はあくまで最低ラインの目安。自分の乗り方を考慮して、早めの交換を検討する価値は大いにあるぞ!
メーカー別の交換推奨タイミングまとめ
(パパ)「じゃあ、車を作っているメーカーはどう言ってるんだ?って思うだろ。これも調べてみた。実は、メーカーによっても推奨スタンスが微妙に違うんだ」
(ママ)「え、そうなの?全部『2年ごと』じゃないんだ」
(パパ)「例えば、トヨタや日産なんかは、取扱説明書で『2年ごと』の交換を推奨していることが多い。これは車検のサイクルと一致するから、非常に分かりやすい」
(パパ)「一方で、ホンダは少し違って、『初回は3年、以降は2年ごと』と指定している車種が多い。新車時はブレーキラインが新品で、内部もクリーンだから、初回は少し長めに設定しているわけだな」
(パパ)「さらに、マツダなんかは、昔から『ブレーキフルードは定期交換不要』(または『点検して必要なら交換』)と記載している車種が多かった。これは『通常の使用(※)であれば、シビアコンディションを除き、交換しなくても要求性能を満たす』という考え方に基づいているらしい」
(ママ)「ええっ!?交換不要って…さっきまでの話と全然違うじゃない!」
(パパ)「(ニヤリ)そこが面白いだろ?メーカーの設計思想や、フルードの経路(材質や密閉性)の自信の違いが現れている。ただし、これはあくまで『メーカーがそう言っている』という話だ。さっき言ったように、水分を吸うというフルードの化学的性質は変わらない」
(パパ)「だから、メーカーが『交換不要』と言っていても、整備工場側は『いや、日本の湿気(多湿環境)を考えたら、2年で交換すべきだ』と推奨するケースがほとんどだ。僕個人の意見としても、安全マージンを考えれば、交換不要というのはちょっと楽観的すぎるんじゃないか、とは思うがな」
(ママ)「うーん…結局、メーカーによっても言うことが違うとなると、余計にどうすればいいか迷っちゃうわね…」
(パパ)「そうだな。だからこそ、『交換しないとどうなるか?』のリスクをちゃんと知っておくことが大事なんだ。それを次に解説しよう!」
交換しないとどうなる?ブレーキトラブルのリスク
(パパ)「『まだ大丈夫だろう』『メーカーが不要って言ってるし』…そう思ってブレーキフルードの交換をサボると、どうなるか。これはもう、脅しでも何でもなく、重大な事故に直結する可能性があるんだ」
水分吸収で沸点が下がり、ブレーキが効かなくなる可能性
(パパ)「H2-1で、ブレーキフルードは『水分を吸う(吸湿性)』と話したのを覚えているか?」
(ママ)「うん、だから沸点が下がるってやつね」
(パパ)「そうだ。新品のブレーキフルード(DOT3)の沸点(ドライ沸点)は205℃以上ある。だが、これが水分を吸っていくと、規格上の限界値(ウェット沸点)では140℃まで下がってしまう。たった数パーセント(※一般的に3~4%程度)の水分が混入するだけで、沸点が60℃以上もドロップするんだ!」
(ママ)「ろ、60℃も!?」
(パパ)「日本の気候は高温多湿。特に梅雨時期なんかは、フルードが水分を吸うには最悪の環境だ。2年も経てば、新品性能はほぼ失われていると考えた方がいい」
(パパ)「そして、沸点が140℃程度まで下がったフルードで、もし旅行先の長い下り坂(峠道など)を走ったら…どうなる?」
(ママ)「あ…さっき言ってた、フットブレーキを多用して高温になるパターン…」
(パパ)「その通り!ブレーキパッドやローターの摩擦熱は、平気で数百℃に達する。その熱がフルードに伝わり、沸点の140℃を超えた瞬間…フルードは沸騰し、気泡(エア)が発生する。これが『ベーパーロック現象』だ!」
(ママ)「(ゴクリ…)」
(パパ)「一度エアが発生すると、もうダメだ。いくらブレーキペダルを踏んでも、その気泡がフニャッと縮むだけで、圧力がブレーキに伝わらない。さっきまで普通に効いていたブレーキが、突然、床までスコーン!と抜けるように効かなくなるんだ。想像しただけで恐ろしいだろ?」
(ママ)「そ、それは…うちの子たちを乗せてる時に起きたら…ダメ、絶対ダメだわ…」
エア混入や腐食によるペダルの“ふにゃふにゃ感”
(パパ)「ベーパーロックは最悪のケースだが、そこまで行かなくても、劣化のサインは現れる。それがペダルの『ふにゃふにゃ感』だ」
(ママ)「ふにゃふにゃ感?」
(パパ)「新品のフルードはカチッとした踏み心地なんだが、水分を含んで劣化してくると、沸点が下がってフルード自体が熱で膨張しやすくなったり、ごく微小なエアが混入したりする。すると、ペダルを踏んだ時に『ギュッ』と効かずに、『フニャ~』とか『グニュ~』といった、奥まで踏まないと効かないような、いわゆる『スポンジー・ブレーキ』と呼ばれる感触になることがある」
(ママ)「それって、ブレーキの効きが悪くなってるってこと?」
(パパ)「そうだ。『効きが悪い』というか『効き始めるのが遅れる』『踏み込まないと効かない』という状態だな。これじゃ、とっさの時に危険回避が間に合わないだろ?」
(パパ)「さらに、水分はもう一つの厄介事を引き起こす。それは『サビ(腐食)』だ」
(ママ)「サビ!?あんな機械の中に?」
(パパ)「ブレーキライン(パイプ)や、ブレーキキャリパーの内部(ピストンなど)は、当然ながら金属部品だ。水分が混入したフルードが長期間そこにあると、内部が錆びてくる。錆びた結果、ブレーキ部品の動きが悪くなったり、ゴム製のシール(パッキン)を傷つけて、そこからフルード漏れを引き起こす可能性だってあるんだ」
(ママ)「うわぁ…沸騰だけじゃなくて、サビまで…」
(パパ)「フルード交換というのは、単に沸点をリセットするだけじゃなく、こういった内部のサビや劣化を防ぐための『デトックス』みたいなもんなんだよ」
ブレーキ性能が落ちると車検に通らないことも
(パパ)「そして、ママ。安全面でのリスクはもちろんだが、実利的な問題もある」
(ママ)「実利的?」
(パパ)「そう、『車検』だ。車検では、必ず『ブレーキテスター』という機械の上で、ブレーキがしっかり効くか(=制動力)を測定する。もし、フルードの劣化(エア噛みやサビによる固着など)が原因で、国が定めた基準の制動力が出ていなければ、その車は車検に通らない」
(ママ)「えっ。じゃあ『メーカーが交換不要って言ってたから』は通用しないんだ」
(パパ)「当たり前だ。車検の基準は、全メーカー共通だからな。結局、車検の時に『ブレーキの効きが悪いですね、フルード交換と、もしかしたら内部の清掃(オーバーホール)も必要かも…』なんて言われたら、どうする?」
(ママ)「えー…余計にお金かかっちゃうじゃない…」
(パパ)「そうだろ?『交換不要』を信じて放置した結果、車検に通らず、結局は高い修理費を払うことになるかもしれない。それなら、2年ごとに数千円で予防的にフルードを交換しておく方が、よっぽど賢明で、何より安全だとは思わないか?」
(ママ)「…ぐうの音も出ません。あなたの言う通りだわ…」
自分でチェックできる?ブレーキフルードの確認方法
(ママ)「はいはい、わかってますよ。で、どこを見ればいいわけ?」
(パパ)「うむ。まずはボンネットを開けるところからだ。エンジンルームを覗き込むと、大体、運転席の目の前のあたり(奥まった壁際)に、半透明の小さなプラスチック製のタンクがあるはずだ」
リザーバータンクの位置と見るべきポイント
(パパ)「それが『リザーバータンク』。ブレーキフルードの貯蔵庫だな。キャップ(フタ)に『BRAKE FLUID』とか『DOT3』みたいに規格が書いてあることが多い」
(ママ)「あ、これね。うちの車にもあるわ。なんか黄色っぽい液体が入ってる」
(パパ)「そうだ。まず見るべきポイントは『液量(量)』だ。タンクの側面に『MAX(上限)』と『MIN(下限)』の線が書いてあるだろ?」
(ママ)「うん、あるある。今は…MAXよりちょっと下くらいね」
(パパ)「よし。液量がこのMAXとMINの間にあれば、とりあえず量はOKだ。だが、もしMINの線ギリギリか、それ以下だったら…これは要注意サインだぞ」
(ママ)「え、なんで?減るもんじゃないって言ってなかった?」
(パパ)「(カチャッ)ママ、甘いな。フルードが減る主な原因は2つだ。一つは、単純に『どこかから漏れている』可能性。これは超危険だ。ブレーキラインのどこかが損傷してるかもしれん」
(パパ)「そしてもう一つ、もっと一般的な原因が『ブレーキパッドの摩耗(減り)』だ」
(ママ)「え?パッドが減ると、フルードも減るの?」
(パパ)「そうだ。ブレーキパッドがすり減っていくと、その減った分だけ、ブレーキキャリパーのピストンが押し出されていく。ピストンが押し出されると、その空間を埋めるために、リザーバータンクからフルードが移動していくんだ。つまり、『液面がMINに近い』=『ブレーキパッドの残量が少ない(交換時期が近い)』という重要なサインでもあるんだよ!」
(ママ)「へえー!なるほど、つながってるんだね!」
フルードの色・にごり・量で交換タイミングがわかる?
(パパ)「そして、ママが気になっていた『色』だ。新品のブレーキフルード(DOT3やDOT4)は、基本的には『透明に近い、薄いあめ色(黄色)』をしている」
(ママ)「うん、うちのもまだそんな感じかな」
(パパ)「それが、使っていくうちに水分を吸ったり、熱による劣化が進んだりすると、だんだん『濃い茶色』や、ひどいものだと『真っ黒』に変色してくる。もしタンクの中を見て、コーヒーみたいに真っ黒だったり、何かが混ざったように濁っていたりしたら、それはもう即交換レベルだ」
(ママ)「なるほど!じゃあ、色がキレイなら、まだ交換しなくても大丈夫ってことね!よかったー」
(パパ)「待て待て待て! ママ、そう結論づけるのが一番危ないんだ!」
(ママ)「え!?なんでよ!汚れてないんでしょ?」
(パパ)「いいか?H2-3で一番の問題だと言った『水分の混入による沸点低下』…。水分は、無色透明だろ?」
(ママ)「あ…」
(パパ)「そう!つまり、『色がキレイ(薄いあめ色)』だからといって、『水分を吸っていない(=沸点が下がっていない)』とは、まったく言えないんだ!」
(パパ)「それに、リザーバータンクの中のフルードは、ブレーキライン全体から見ればごく一部だ。一番熱にさらされるブレーキキャリパー(タイヤのところ)付近のフルードは真っ黒に劣化しているのに、タンクの中だけは比較的キレイ…なんてことはザラにある。だから、色だけで『まだイケる』と判断するのは、あまりにも危険なんだよ」
「心配なら整備士に相談」が基本スタンス
(ママ)「じゃあ、結局どうやって判断すればいいのよ!?」
(パパ)「だから、僕ら素人がボンネットを開けてできるチェックは、あくまで『液量がMINに近くなっていないか(=漏れやパッド摩耗のチェック)』がメイン。色の変化は『そろそろ交換した方がいいかもな』という、目安程度にしかならないと心得ておくべきだ」
(ママ)「じゃあ、肝心の『沸点』が下がってるかどうかは、どうやって知るの?」
(パパ)「それはもう、プロに任せるしかない。整備工場やカー用品店には『ブレーキフルードテスター』という専用の機械があって、フルードに電極を差し込んで、水分含有量や沸点を(簡易的ではあるが)測定できるんだ」
(ママ)「へえー、そんな機械があるんだ!」
(パパ)「そうだ。だから、『前回交換してから2年経ったけど、色はまだキレイだし…』なんて素人判断で交換を先延ばしにするのが、一番のリスクになる」
(パパ)「僕たち『サルヂエファミリー』のコンセプトは"なんでも自分達で調べてみる"だが、ことブレーキ周りの整備に関しては、『調べてリスクを理解した上で、点検・交換作業はプロに任せる』のが正解だ。僕もDIYは好きだが、ここばかりは触らない。怪獣たち(息子たち)の命を乗せているんだからな!」
(ママ)「ふーん…DIY好きなあなたでも、そこは触らないわけね。その重み、しかと受け取ったわ。了解」
まとめ|安全に乗り続けるために、正しい知識を
(パパ)「さて、ママ。今回の企画『ブレーキフルードの交換時期はいつが正解か?』。振り返ってみると、いろんなことが分かったな」
(ママ)「うんちく、お疲れ様でした。要するに『2年(車検)ごと』が目安だけど、それは『水分を吸って沸点が下がる(=ブレーキが効かなくなる)』のを防ぐため。メーカーによっては『交換不要』なんて言ってるところもあるけど、日本の気候や安全マージンを考えたら、やっぱり交換しとけ、ってことでしょ?」
(パパ)「(カチャッ)…ママ、100点の回答だ!素晴らしいじゃないか!」
交換は“面倒”じゃなくて“命を守るメンテナンス”
(パパ)「そうだ。結局のところ、ブレーキフルードの交換は、エンジンオイル交換なんかと比べると、その必要性や効果が非常に『見えにくい』メンテナンスなんだ」
(ママ)「確かに。交換したからって、燃費が良くなったり、走りが速くなったりするわけじゃないもんね。だからつい『まぁ、いいか』ってなっちゃう」
(パパ)「だが、今日散々話したように、これは『性能を良くする』ためのものじゃない。『最悪の事態を防ぐ』ための、いわば"保険"であり、"命綱"のメンテナンスなんだ」
(パパ)「僕たち家族が、あの怪獣たち(息子たち)を乗せて安心してドライブできるのは、車が『ちゃんと止まる』という絶対的な信頼があるからだ。その信頼を、たった数千円の交換費用をケチったせいで失うわけにはいかない。交換は『面倒な出費』なんじゃない。『家族の命を守るための必要経費』なんだよ」
(ママ)「…なんか、今日はいつものうんちくパパと違って、ちょっとカッコイイわね」
「交換サイクルを覚える」コツと管理法
(パパ)「(ゴホン)。まぁ、そうは言っても、うっかり忘れてしまうこともあるかもしれない。そこで、僕たちのような"ズボラ"な人間でも交換サイクルを忘れないための、簡単な管理法を提案しよう」
(ママ)「あら、自分でズボラって言ったわね」
(パパ)「一番簡単なのは、やはり『車検とセットで必ず交換する』と決めてしまうことだ。これが一番忘れない」
(ママ)「うん、それがシンプルでいいわね」
(パパ)「もし、車検を安く上げるために、ユーザー車検や格安車検(※フルード交換が含まれていないプラン)を選ぶ場合は、自分で意識して管理する必要がある。例えば、車検証と一緒に『前回ブレーキフルード交換:2025年11月』みたいにメモを挟んでおくとか、スマホのカレンダーに2年後のリマインダーをセットしておくとかだな」
サルヂエ家流・交換管理術
- 基本:『車検ごと(2年)』と決めてしまい、整備工場に必ずお願いする。
- 応用:格安車検などを使う場合は、車検証に交換履歴のメモを貼っておく。
- 注意:中古車で買った場合は、前のオーナーの交換履歴が不明なことが多い。購入したら、まず一度交換しておくのがベスト!
費用を抑えたいなら記事2で費用比較をチェック!
(パパ)「とはいえ、だ。ママはやっぱり『費用』も気になるだろ?」
(ママ)「ギクッ。…ま、まぁね。命を守るためとはいえ、安く済むならそれに越したことはないじゃない。ディーラーでやると高いイメージあるし」
(パパ)「(ニヤリ)だろうと思ったよ。実は、ブレーキフルード交換って、どこでやるか(ディーラー、カー用品店、ガソリンスタンド、町の整備工場)によって、工賃や使うフルード代が結構違うんだ」
(ママ)「え、そうなの!?」
(パパ)「そうだ。例えば、ディーラーは純正フルードを使ってくれて安心感は抜群だが、工賃は高め。カー用品店は、フルードの種類を選べたり、比較的安価だったりするが、お店によって技術力に差があるかもしれない…とか、一長一短あるんだ」
(パパ)「というわけで!次回のサルヂエ家"やってみた"企画は、『ブレーキフルード交換、どこでやるのが一番コスパいいんだ!?徹底比較!』をお送りするぞ!」
(ママ)「お、いいじゃないそれ!安全は確保しつつ、節約も大事だからね!期待してるわよ、パパ!」
(パパ)「任せておけ!…というわけで、今回の調査報告は以上だ!」