「またこのハガキが来たわよ……」
リビングのテーブルに放り投げられたのは、車検のお知らせ。「え、もう2年経った?」と驚くパパに、ママがため息交じりで答えます。
「そうよ。今の軽自動車、もう7年目だし。前回もタイヤ交換だバッテリーだって10万円以上かかったじゃない? 今回もまたそれくらいかかるなら、いっそ買い替えちゃった方が月々の支払いは楽になるんじゃない?」
「うーん、確かにまとまった出費は痛いけど、買い替えたらローンが始まるしなあ。本当に今が買い時なのか、それとももう一回通すべきなのか……ちゃんと計算してみないと損しそうだな」
軽自動車や中古車に乗っていると必ずぶつかる「車検を通すか、買い替えるか」という悩み。
私たちサルヂエファミリーも、毎回このタイミングで家族会議になります。
「とりあえず車検を通しておけば安心」と思考停止するのは危険です。車の状態や市場価値によっては、車検代を払うことでかえって損をしてしまうケースもあるからです。
この記事では、我が家のような「維持費重視」の家庭に向けて、車検前後の買い替え判断をコストとリセール(再販価値)の両面から徹底検証します。
損をしないための目安年数や、車検残しで少しでも高く売るコツまで、一緒に見ていきましょう。
軽自動車や中古車は「車検のたびに買い替え」が得って本当?
「よく『車検が来るたびに新車に乗り換えるのが一番賢い』なんて言う人もいるけど、あれって本当なのかな? 金持ちの道楽にしか聞こえないんだけど」
パパが首をかしげると、ママがスマホの電卓を叩きながら返します。
「でも、車検代が毎回10万、15万かかるなら、それを新しい車の頭金にしちゃえばいいって考え方もわかるわよ。特に軽自動車って、中古でも高く売れるっていうじゃない?」
確かにその通りです。しかし、結論から言うと「毎回必ず買い替えるのが得」とは限りません。車種や走行距離、そして「次にどんな車に乗るか」によって正解は変わります。まずは現状を整理してみましょう。
軽自動車の車検費用とリセールバリューの現実
軽自動車の最大のメリットは、維持費の安さとリセールバリュー(売却価格)の高さです。普通車に比べて値落ちしにくいため、「3年落ち」「5年落ち」程度なら、驚くような高値がつくことも珍しくありません。
しかし、車検費用自体は、年数が経つにつれて確実に上がっていきます。
新車から3年目の初回車検では、交換部品も少なく法定費用+αで済みますが、5年目、7年目となると話は別です。
- タイヤの摩耗
- バッテリーの劣化
- ブレーキパッドの交換
これらが重なると、軽自動車でも車検総額が10万円を超えることはザラにあります。一方で、車の価値(査定額)は時間とともに下がっていく。この「維持費の上昇」と「価値の下落」がクロスするタイミングを見極める必要があります。
中古車は「次の車検」で価値が大きく落ちる?
中古で買った車の場合、すでに「ある程度の年式」になっています。ここが新車ワンオーナーとは違う注意点です。
例えば「5年落ちの中古車」を購入して2年乗れば、次は「7年落ち」。さらに次は「9年落ち」です。
中古車市場では、「7年落ち」「10年落ち(または走行10万キロ)」という節目でガクンと買取相場が下がる傾向があります。
「つまり、今乗っている中古車が次回の車検で『10年落ち』のラインを超えるなら、車検を通してもその後の価値はほぼゼロ……なんてこともあり得るわけか」
パパの言う通り、価値がゼロになる車に高額な車検代をかけるのは、経済的には「掛け捨て」に近い状態になってしまいます。
「車検代+修理費」対「買い替えコスト」の比較目安
では、どう計算すればいいのでしょうか。ざっくりとした比較式を作ってみました。
- Aプラン(乗り続ける): 今回の車検代 + 今後2年間の予想修理費 + 2年後の査定ダウン分
- Bプラン(買い替える): 乗り出し価格 - 今の車の買取額
多くの人が「今回の車検代」と「次の車の価格」だけで比較してしまいますが、重要なのは「2年後にどれだけ価値が残るか」です。
もし今回の車検見積もりが15万円で、2年後にその車の価値がほぼ0円になるとしたら、その15万円は純粋なコストです。逆に、今売れば30万円になるなら、その30万円を次の車の購入資金に充てることで、トータルの出費を抑えられる可能性があります。
「なるほどね。単に『車検代が高いから嫌』じゃなくて、『この修理代を払ってまで、あと2年延命させる価値がこの車にあるか?』って考えなきゃいけないのね」
車検前に買い替えるメリットとは?損益分岐点を探る
「でもさ、車検を通したばかりの車の方が、高く売れるんじゃないの? 『車検2年付き!』って売り文句になるし」
ママの素朴な疑問。これは多くの人が陥りやすい罠です。実は、「車検を通してから売る」のは、金銭的には損をするケースがほとんどなのです。
車検を通す前に査定に出すと買取額が変わる理由
車検の残り期間は、確かに査定額にプラスの影響を与えます。しかし、そのプラス幅は「実際にかかった車検費用」を上回ることはまずありません。
例えば、車検費用に10万円かかったとします。その直後に売却しても、査定額が10万円アップすることはなく、せいぜい2〜3万円のプラス評価にしかならないのが現実です。
- 車検を通さずに売る: 査定額 30万円(手元に残るお金)
- 車検を通して売る: 査定額 33万円 - 車検代 10万円 = 実質 23万円
「えっ! じゃあ車検を通すだけ丸損じゃない! 手間暇かけて損するなんて最悪」
そうなんです。買取店側は自社工場や提携工場で安く車検を通せるため、ユーザーが正規料金で通した車検の価値をそのまま価格には反映してくれないのです。だからこそ、「車検が切れる直前」が最も無駄なく売れるタイミングと言えます。
車検残存期間が長いと売却価格は有利になるのか
「じゃあ、車検がまだ1年残っている場合はどうなの?」
車検の残存期間が1年以上ある場合は、プラス査定になりやすい傾向があります。次のオーナーがお得に乗れる期間が長いからです。
逆に、残り期間が数ヶ月程度だと「車検なし」とほぼ変わらない評価になることが多いです。
- 残り1年以上: プラス査定のチャンスあり
- 残り数ヶ月〜ギリギリ: ほぼ評価されない(が、マイナスにもならない)
- 車検切れ: 公道を走れないため、出張査定やレッカー移動が必要になり、手間とコストがかかる
重要なのは、「車検切れ」になって動かせなくなる前に動くこと。車検が切れてしまうと、売るためのハードルが一気に上がってしまいます。
「車検費用を払う前」にチェックすべき3つの判断基準
そろそろ車検の時期だな、と思ったら、予約を入れる前にまず以下の3つをチェックしてください。これで「通すべきか売るべきか」の判断がかなりクリアになります。
- 見積もり額が車両価値を超えていないか?
ディーラーや整備工場で事前見積もりを取り、同時に買取店で「今の査定額」を聞いてみましょう。修理・車検代が査定額に近い、あるいは超えているなら、経済的には買い替えのサインです。 - 重整備が必要な箇所があるか?
タイミングベルト、エアコンのコンプレッサー、オートマチックトランスミッションなど、10万円単位の修理が見込まれる場合は、無理に通さず手放すのが賢明です。 - タイヤの溝は残っているか?
地味ですが大きな出費です。タイヤ4本交換が必要と言われたら、それだけで数万円のプラス出費。これを次の車への投資に回すという判断もアリです。
「まずは今の車の『健康診断(見積もり)』と『時価(査定)』を知らないと、作戦も立てられないってことね。面倒くさがらずに見積もりに行かなきゃ」
中古・軽自動車の「買い替えタイミング」は何年目がベスト?
「結局、何年乗って売るのが一番『元が取れる』のかしら。新車で買って3年? それとも乗り潰す?」
ママが核心を突く質問を投げかけます。これにはパパも腕組みをして考え込みました。
「車のリセールバリュー(再販価値)は、一直線に下がるわけじゃないんだ。『ガクンと下がる崖』みたいなタイミングが何度かある。そこを避けて手放すのがセオリーだね」
一般的に、軽自動車や人気の中古車には、価格が変動する「節目」があります。
3年・5年・7年・9年目それぞれの市場価値
車の価値は、車検のタイミングである奇数年で大きく動きます。それぞれの特徴を見てみましょう。
- 3年目(初回車検):
最も高く売れますが、購入時の価格からの下落幅(減価償却)も大きいです。「常に最新モデルに乗りたい」人向けで、コスパ重視の我が家のような層には少し贅沢な選択かもしれません。 - 5年目(2回目車検):
ここが一番の狙い目です。 メーカー保証(特別保証)が切れるタイミングであり、中古車市場でもまだ「高年式」として人気があります。ローン完済の時期とも重なりやすく、多くの人が買い替えを選びます。 - 7年目(3回目車検):
市場価値が一段階下がりますが、軽自動車ならまだ値段がつきます。ただ、故障リスクが上がり始める時期でもあります。 - 9年目以降:
ここを超えると、査定額は「数万円〜0円」に近づいていきます。ここまで乗るなら、売却益は期待せず「乗り潰す」覚悟が必要です。
「2回目の車検」で買い替える人が多い理由
「なるほど、だから『5年目』で買い替える人が多いのね」
そうです。5年目は、車の価値がある程度残っている最後のチャンスとも言えます。
特に軽自動車の場合、5年落ち程度なら新車価格の50%近くで売れることも珍しくありません。
【買い替えを検討すべき人】
- 今の車に5年以上乗っている。
- 走行距離が5万キロを超えてきた。
- 家族構成が変わり、広さや使い勝手に不満がある。
【買い替えなくていい人】
- 年式は古いが、走行距離が非常に少ない(年間3,000km以下など)。
- 今の車に愛着があり、修理費がかかっても乗り続けたい。
- 次に乗りたい車がまだ決まっていない。
走行距離10万キロの壁と修理リスクの関係
年数と同じくらい重要なのが「走行距離」です。
中古車市場には「10万キロの壁」という心理的なラインが存在します。9万キロ台と10万キロ台では、査定額に雲泥の差が出ます。
「機械的にも、10万キロって結構ガタが来るわよね。前の車もそれくらいでエアコンが壊れたし」
ママの記憶通り、10万キロ前後では高額な部品交換ラッシュが訪れます。
- タイミングベルト(またはチェーン周り)
- ウォーターポンプ
- オルタネーター(発電機)
これらの修理にはそれぞれ数万円〜10万円近くかかります。「車検代+修理代」で20万円コースになる前に、9万キロ台で手放すのが経済的には賢い選択と言えるでしょう。
車検を通した直後に「やっぱり買い替えたい」となったら?
「待って。もしこの記事を読む前に、うっかり車検を通しちゃった人がいたらどうするの? 『しまった!』って後悔しても手遅れ?」
パパが心配そうに言います。確かに、車検を通した直後に「急な転勤が決まった」「もっと良い車を見つけてしまった」「直した直後に別の場所が壊れた」というケースはあります。
結論から言うと、手遅れではありませんが、痛み(損失)は伴います。
車検を通した直後は査定額で損をする?
先ほどお伝えした通り、車検にかかった費用(例えば10万円)が、そのまま査定額に上乗せされることはありません。
通した直後に売ると、「車検代の分だけ丸々赤字」になるのが基本です。
しかし、だからといって「次の車検まで2年間無理して乗り続ける」のが正解とも限りません。
車検直後でも「傷を浅くする」売却タイミング
「損切り」という考え方があります。
例えば、車検を通した直後にエンジンやミッションなどの重要機関に不調が見つかった場合です。
「せっかく車検を通したから」といって、さらに修理費に20万円かけるなら、今の時点で多少損をしてでも手放した方が、トータルの出費(傷)は浅く済む場合があります。
また、「車検残23ヶ月以上」という状態は、中古車販売店にとっては「すぐに乗れる車」として売りやすいメリットがあります。車検費用全額は取り戻せなくても、通常よりは強気の買取価格を引き出しやすいタイミングではあるのです。
「通したばかりでも売っていい」ケースと「待った方がいい」ケース
迷ったときは、以下の基準で判断してみてください。
【売ってしまってもいいケース】
- 高額な追加修理が発生しそうな場合: 車検代以上の修理費がかかるなら、撤退すべきです。
- ライフスタイルが激変した場合: 子供が生まれて2ドアでは無理、介護が必要になった等のっぴきならない事情がある場合。
- 市場価値が高い人気車種の場合: ランクルやジムニー、N-BOXなどの超人気車なら、車検残がプラス評価されやすく、傷が浅く済みます。
【待った方がいい(乗り潰すべき)ケース】
- 単なる気変わり: 「なんとなく飽きた」程度なら、車検代を償却するために少なくともあと1年は乗ることをお勧めします。
- 不人気車や過走行車: 査定額がそもそも低い車の場合、車検残があっても評価されにくいです。この場合は、タイヤがすり減るまで乗り倒した方がコスパは良いでしょう。
「やっちゃったものは仕方ない。その時点での『最善』を選ぶしかないのね。感情的になってすぐ売るより、一度冷静に電卓を叩くのが大事ってことか」
車検残しで少しでも高く売る!軽・中古車ユーザーの具体策
「よし、計算してみたら買い替えた方が良さそうだ、ってなったら? そのままディーラーに『下取り』に出せばいいの?」
ママが次のステップに進もうとしています。ここでパパが眼鏡をクイッと上げて止めに入りました。
「待った。ディーラーの下取りが一番『楽』だけど、一番『安い』可能性が高いんだ。少しでも高く売りたいなら、手間を惜しんじゃダメだ」
車検が残っている車、特に需要のある軽自動車や中古車を高く売るには、いくつかのセオリーがあります。
査定前に最低限やっておくべき準備
査定士も人間です。「大事に乗られてきた車だな」と思わせるだけで、印象点は変わります。
- 洗車と車内清掃を徹底する
外装の汚れを落とすのはもちろん、車内のゴミを捨て、掃除機をかけておきましょう。特にタバコやペットの臭いは大きなマイナスポイントです。消臭剤を使ってできるだけ無臭に近づけてください。 - 小さな傷は「直さない」
「バンパーの擦り傷、コンパウンドで消した方がいい?」と思うかもしれませんが、素人の補修は逆効果になることが多いです。また、板金修理に出しても、修理代以上に査定額が上がることはまずありません。傷はそのままでOKです。 - 純正パーツを用意しておく
もしパーツを交換している場合、純正品があれば必ず積み込んでおきましょう。スタッドレスタイヤを持っている場合も、セットでアピールするとプラスになることがあります。
車検残り月数ごとの買取相場の変動イメージ
売却のタイミングについて、もう少し解像度を上げてお話しします。買取店が「プラス査定」を出しやすい時期の目安です。
- 車検残13ヶ月以上(プラス評価◎):
次のオーナーが1年以上そのまま乗れるため、明確な強みになります。強気で交渉してOKです。 - 車検残4ヶ月〜12ヶ月(プラス評価△):
大きなプラスにはなりにくいですが、「すぐに乗れる」という点でマイナスにはなりません。標準的な相場通りに売れます。 - 車検残3ヶ月未満(評価なし):
実質的に「車検なし」と同等の扱いになります。ただし、自走して店舗に持ち込める分、車検切れよりはマシです。
一番もったいないのは、「迷っているうちに車検が切れてしまった」というパターン。
車検が切れると公道を走れないため、出張査定に来てもらうか、仮ナンバーを取得して持ち込むしかなくなり、足元を見られやすくなります。「切れる1ヶ月前」が最後のリミットだと考えてください。
複数の査定サービスを賢く使い分けるコツ
「でも、あちこちの店を回るのって大変じゃない? 子供もいるし」
ママの言う通りです。そこで活用したいのが、ネット上の査定サービス。ただし、種類によって特徴が違います。中立的な視点で使い分けを紹介します。
- 一括査定サービス:
一度の入力で複数の業者に依頼できます。「一番高く売れる」可能性が高いですが、登録直後から電話がたくさんかかってくることがあります。「電話対応は苦にならないから、とにかく高く売りたい」パパ向け。 - オークション形式・ユーカーパック等:
やり取りは1社だけで、提携業者が入札する形式。電話ラッシュがなく「楽にそこそこの高値」が狙えます。忙しいママ向け。 - ディーラー下取り:
次の車の納車まで乗っていられるなど「手続きが一番スムーズ」ですが、買取価格は低めになりがち。価格交渉の「当て馬」として査定額だけ聞いておくのが賢い使い方です。
「いきなり1社で決めずに、最低でも『ディーラー下取り』と『買取店の査定』の2つは比較すべきね。その差額が数万円あれば、家族で美味しい焼肉に行けるもの!」
まとめ:車検を通すか買い替えるか迷ったら「残り期間」と「修理費」を軸に考えよう
最後までお読みいただきありがとうございます。
軽自動車や中古車の「車検か買い替えか」問題は、感情論ではなく「数字」で判断するのが、私たちサルヂエファミリー流の解決策です。
今回のポイントを3つにまとめました。
- 「車検を通してから売る」は損するだけ!
車検費用分がそのまま査定額に上乗せされることはありません。売るなら「車検を通す前」が鉄則です。 - 「年式」と「距離」の崖を意識する
「5年落ち・7年落ち」「10万キロ」など、価値が大きく下がるタイミングの手前で手放すのが、最もコスパの良い乗り継ぎ方です。 - 修理見積もりが高額なら、迷わず査定へ
車検代+修理費が、今の車の査定額(または次の車の頭金)に匹敵するようなら、それは「車の寿命」ではなく「経済的な寿命」です。
「まだ乗れるのにもったいない」という気持ちはわかります。
でも、その車にこれからかかる10万円、20万円という維持費を、「次の新しくて安全な車」のために使うという選択肢も、家族のためには立派な節約です。
まずは車検の見積もりを取り、それを持って買取店の査定を受けてみてください。
「えっ、うちの車、まだこんな値段がつくの!?」という驚きが、新しいカーライフの始まりになるかもしれませんよ。
【参考文献・参照ソース】
一般財団法人 日本自動車査定協会(JAAI)「中古自動車査定基準」
国土交通省「自動車検査・登録ガイド」
主要中古車買取サイト(カーセンサー、グーネット等)の買取相場データおよび車検残存期間に関する解説記事